2015年のmusipl.comでの4月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 ほわいとねおん
『あめはあがる』
 こういう声は時々、本当に時々聴こえてくる福音のようなものだと思っている。男女問わず高音域を伸ばせるだけ伸ばすように歌うことが心地良いとされていて、その限界まで行くとファルセットで切り替えてさらに上を歌おうとする。それキーを下げればもっと楽に歌えるんじゃないのと思うけれども、その限界ギリギリにチャレンジしているのが良いんだと、多くのシンガーは持てる高音の限界を披露してくれる… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 中島らも
『いいんだぜ』
 ロックである。タブーとされている何かをタブーとせずに「オレはいいぜ、お前はどうなんだ?」と問われているようでグサッとくる。ロックが単なる音楽ジャンルではなく生き様なのだ魂なのだといわれる所以はこの歌を聴くだけで理解できるのではないだろうか。革ジャンにリーゼントをして決め決めでパフォーマンスをするのはロックではなくただのファッションで、ファッションのロックンローラーが… (レビュアー:大島栄二)
 

 
3位 tardigrada
『秋桜』
 四畳半エモというらしい。エモと標榜する音楽はここ数年、いや10年以上ロックシーンに溢れているのだが、本当にエモーショナルを揺さぶってくれるような音楽に出会うことはとても稀だ。だがこの四畳半エモとはフォークを基調にしたエモだそうで、聴いていると確かにフォーク的な旋律がある。そしてなにより、感情を揺さぶるような力がある。フォークが四畳半と言われていた時代はもはや遠い記憶の底だが… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 The Electros
『Paradox』
 小気味いいテンポで最初から最後まで貫かれている。かなり急ぎ足のようなサウンドに追われるかのような気分になるし、ビデオの作りがその興奮を加速させている。でも、ちょっと待てよ? 歌メロ自体はそんなに突拍子も無く速い何かを要求するようなものではない。結局無駄に煽るような構成になっているアレンジがそのテンポ感を過剰に生み出そうとしているように感じられる… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 Wire Stripper
『Real Land』
 ロックってなんだろうかといつも思う。それは生き様であるというのがひとつの結論ではあるが、じゃあそれが唯一の解なのかというとそうでもなく、仮に生き様だとして、その生き様を音楽で表現するというのはどのような手法や技術があるのだろうかというのも、やはり明快な答えなどはない。彼らWire Stripperは公式にはハードロックバンドらしいのだが、この表現にはハードロックかどうかなどはほとんど関係が… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 ドブロク
『MY STORY』
 動画が始まって、走る男の姿が映される。延々と、延々と。気がつけば曲が始まるのは50秒が過ぎた頃だ。50秒もの走るだけの音から始まる動画はもはや音楽のプロモーションには適さない。曲が始まる前に飛ばされるからだ。しかし、この走るシーンには意味がある。僕が思っているだけかもしれないけれど。淡々と走ってきた男は信号で立ち止まり、腕を膝に置いて息を切らす。目は赤の信号を見つめていて… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 Loveskills
『Cover Me』
 「これぞ良質なポップミュージックだ!!!!!!」と声を上げずにはいられないほどに、初めて聴いた瞬間から胸をわしづかみされた "Cover me" 。私はこの曲が好きすぎて「疾走感のあるエレポップ」「80'sシンセポップ」と簡単に片付けたくありません。現在進行形のダンスビートに切ない歌詞とサラ〜ッと気持ちの良いボーカルが唯一無二のサウンドを作り上げていて、普段、J-POPしか聴かない人にもしっかりと心に響く… (レビュアー:本田みちよ)
 

 
8位 ケリーマフ
『イカサマ』
 コワい。いや、カッコいい。このシャウトの仕方が、本当にシャウトというか、吠えているというか、悪態をついているというか、かなり独特で耳からなかなか離れてくれそうもない。これだけ吠えまくりなのにしっかりと音楽になっていて、とても面白い。ロックバンドの人は楽譜なんて読めなくて当たり前とか、いやいや楽譜も読めなくて音楽が出来るかとか、もはやそんな論争など意味不明なくらいに… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 UQiYO
『Twilight』
 愛さずにはいられないバンド“UQiYO”。Vo/ComposerのYuqiを軸に2010年よりPhantaoと活動を開始。UQiYOは毎回斬新なアイデアでリリースをしているのですが、2013年5月リリースのアルバム『UQiYO』は、評判がSNSなど口コミで広がり、MUSIC SHAREにもご出演頂きました。その後、全国のCDショップやレコードセレクトショップで大きく取り上げられ、発売から1年後に、なんと!レーベルや事務所に… (レビュアー:本田みちよ)
 

 
10位 羊毛とおはな
『明日は、』
 音楽はそれ自体、各個人の気持ちをふくらませるものなのだけど。時々ふいに、サウンドや詞とは全く別の、歌い手が全く意図していないかもしれない気持ちになることがある。「この唄っている人は、ものすごく歌が好きで好きで、歌が好きなんだろうな」っていう。そこには裏付けなどなく、勝手な聴く側の思い入れで、でも、歌に対する尊敬が、キューンと共鳴する時にだけ、楽曲やメッセージとも関係ない… (レビュアー:北沢東京)
 

 
次点 Flipper's Guitar
『恋とマシンガン』
 先日岡崎京子の展覧会最終日に小沢健二がシークレットでライブを行い、ネットでは話題騒然だった。表舞台から去ってもう何年になるのだろうか。数年前にはUstで生中継を行うと告知して多くの人がやはり注目したものの、ニューヨークからの生中継でたいした発表もおこなわれることなく、なんだ、Ust試してみたかっただけなのかとかなり肩透かしを喰らった印象を持ったこともある。だがそれでもある層の音楽ファンに… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 ほわいとねおん『あめはあがる』:レビュー公開からまたたく間にアクセスが増えて4月のアクセスランク同等のダントツの1位。このほわいとねおん、実は無期限活動停止に入ったそうです。HPでは長期の活動停止であると公表されていたのですが、このレビューを公開した直後にTwitterなどでも正式に活動停止を表明し、そういうことも重なって、アクセスが増えたのかもしれません。なんか嬉しいような哀しいような、レビューを公開したのが彼らの正式活動休止を後押ししたのではないかと、複雑な気分でもあります。

2位中島らも『いいんだぜ』:ロックってなんなんだろうということをやっぱり考えさせられる歌。中島氏はテレビでもタレント的にKYな毒舌を飛ばして人気だったりしてたので、これもネタだといえばそうなのかもしれませんが、じゃあ普通の人がこれをやれるのかといえばなかなか出来ないだろうし、そういう毒舌を人生賭けてやっていたというのが、やはり生き様としてのロックなのかもとか思います。もちろん彼はテレビタレントだけでなく、コピーライターにエッセイスト、小説家など様々な活躍をされたマルチな人。しかし歌もやってたとは知らなかったと、多くの人にコメントをいただきました。

3位tardigrada『秋桜』:四畳半エモとはいったい何なのか。ジャンルというのは基本的にリスナーが見知らぬ音楽を「これはどういうものだろう」と知る手がかりにするためのもので、だから既存のジャンルに無理矢理はめ込んでしまったりもするのですが、アーチストは新しい唯一無二の音楽をやっている気概があるので、既存には無いジャンルを表明したがったりします。しかしまだ誰も使ってないジャンルの言葉など発見するのも難しく、それが自分の音楽に合っていることはさらに難しい。そういう意味でも、この四畳半エモという言葉はとても適切で、彼らの看板としてピッタリだと感じました。

6位ドブロク『MY STORY』:音楽の動画をYouTubeに公開するというのは、無料で聴かせるわけだから基本的にはプロモーション目的のはず。だとすると開始から15秒も音楽が始まらなかったり、始まってもイントロだけで1分あったりするともう飛ばされてしまうので、プロモーションビデオにはなりません。ところがこの動画は50秒も音楽が始まらない。何のためにそうなのかと思うのですが、よくよく見て聴くと、音楽とこの無音楽部分がとてもシンクロしている。不可欠な無音楽部分なのだなと理解出来ます。理解出来るからといってプロモーションになるのかというと疑問ですけれど、そういうものだって有っても良いなと、ちょっと思って紹介しました。

8位ケリーマフ『イカサマ』:昨年7月のレビュー以来これで10ヶ月連続のアクセスランキングトップ10入り。ケリーマフすごいです。先日ツアーで京都にやってきたので観に行ってきました。ライブも動画の通りに吠えまくっていて、でも単に吠えているだけというのともちょっと違った、やわらかい何かも感じられて興味深かったです。その感想は既にライブレポート記事があるのでそちらをどうぞ。さあこの連続ランクインはどこまで伸びるのでしょうか。

9位UQiYO『Twilight』:先月からレビュアーとして参加している本田みちよさんが好きすぎるバンドのUQiYOが9位にランクイン今月は本田さん率いるKANADeと一緒にライブをするそうなので、それも観に行こうかなと調整中。

10位羊毛とおはな『明日は、』:訃報が流れてくると反射的にお悔やみをタイプしてSNSで投稿する。投稿することで何かが終わるのか、次の話題の中にお悔やみは埋もれていく。リアルの人もそうやって何かの区切りをつけることで次に進んでいくものなのかもしれないけれど、若い人の訃報はやはり腹にズシンときますね。北沢東京さんの淡々とした、曲そのものとはあまり関係のないレビュー文章が僕はとても好きなのですけれども、このレビューでは曲そのものから離れた彼の文章が、逆に曲にアーチストに最接近するマジックのように感じました。僕も羊毛とおはなよく聴いていました。

 4月の終わりから急に暑いレベルに気候が変わってきましたが、みなさんのエリアはいかがでしょうか?同じ月に雪が降ったとは思えない4月でしたが、夏バテなどすることなく、アイスでも食べて乗り切りましょう。え、まだ5月だよって? 8月くらいにはいったいどうなるんでしょうかねえ??

(大島栄二)