tardigrada『秋桜』
Toro Y Moi『Empty Nesters』
ドブロク
『MY STORY』
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動画が始まって、走る男の姿が映される。延々と、延々と。気がつけば曲が始まるのは50秒が過ぎた頃だ。50秒もの走るだけの音から始まる動画はもはや音楽のプロモーションには適さない。曲が始まる前に飛ばされるからだ。しかし、この走るシーンには意味がある。僕が思っているだけかもしれないけれど。淡々と走ってきた男は信号で立ち止まり、腕を膝に置いて息を切らす。目は赤の信号を見つめていて、青に変わった途端にまた走りはじめる。これは、人生だ。この歌が歌っている、人生だ。昨日も明日も、同じ気持ちでいよう。淡々と続く同じことを同じ調子で繰り返す。信号待ちであなたを想う。走り出すと、また想うのをやめるのか。想い続ける余裕は無いのだろう。走っていると走るのに懸命にならざるを得ないのだろう。だから信号待ちの時だけ、あなたを想うことが許される。そんな人生に何の価値があろうか。価値の有無を考える余裕さえ、無いのだろうか。だとしても、人生なんてそんなもので、昨日も明日も、同じ気持ちで淡々と続いていく。こういう淡々としたことを淡々と歌うバンドの音楽は、目立たないだろうが、ちゃんと聴くと心強い。500ものレビューを日々繰り返してきたこのサイトも、やはり同じように淡々と、淡々と。
(2015.4.7)
(レビュアー:大島栄二)
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