2017年のmusipl.comでの1月アクセス数上位10レビューはこちら!


 
1位 ザ・ラヂオカセッツ
『東京』
 東京というタイトルの歌はたくさんあって、そのいずれもが地方出身者が見た東京の幻影のようなものであるように感じている。東京出身者の友人に言わせれば、盆正月に帰る場所がある人の東京と自分にとっての東京は違うらしく、だったら東京出身者による東京の歌があってもいいと思うが、現実にはそのほとんどが地方出身者が見る東京の歌ばかり。それはやはり一旦孤独になる瞬間を持ち、その孤独を東京の… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 エレファントカシマシ
『RAINBOW』
 初期のピリピリとしたライヴのときの彼らを知っている人から、宮本氏が頭をかきむしりながらとりとめなく話すさまがTVの音楽番組で見られるようになった頃、実験と模索を繰り返し進んでゆく在り方、そして、2015年の『RAINBOW』は見事に過去と今の、エレファントカシマシを未来に向けて投げかける内容で、特に、表題曲「RAINBOW」の疾走感は堪らなく、これを。「俺たちの明日」や他にも選ぶべき曲も踏まえ… (レビュアー:松浦 達
 

 
3位 緑黄色社会
『またね』
 焦点を絞るというのは意外に難しい。バンドメンバーが4人いれば4つの個性も価値観も自己主張もあるわけで、それを交通整理して誰かの欲求を抑えてまで誰かを前に前にと押し出すよりは、1/4ずつの想いをちょっとずつ小出しに民主的に作品を作った方が楽だし楽しい。だがそれはスタジオの中だけの身内にとっての楽であって、音楽を共有するはずの聴衆にとっての楽しさではない… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 羊文学
『春』
 ネタバレになるのだろうか。でもきっとこれはこの歌の展開がネタバレになったところで、ネタとしての結論がバレれば価値が失われるというものではないので、きっと言っても大丈夫だろう。なぜなら、ここで描かれているのは話の展開としてのストーリーではなくて、ましてやオチのあるお笑いネタでもなくて、アートだからである。  ボーカルのはいじさんが笑顔で「嫌い」というのを連呼する。そんな歌を聴かされて… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 Sentimental boys
『グッドバイ』
 いつの時代も別れは表現の大きなテーマ。人の心が揺さぶられるからだろう。その名もズバリ「グッドバイ」というこの曲で、男の声のボーカルが別れの歌を歌う。画面には自転車を漕ぐ若い女性。「足早に荷物をまとめてこの街にもサヨナラを告げた」といい、バスで移動していることに触れ、「できれば君の涙は見たくなかった」と歌う男。自転車を漕ぐ女性は出ていってしまった男を追っているのだろうかと想像してしまう…(レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 THE BOY MEETS GIRLS
『アイスクリームポップスター』
 このMVはそんなアイス好きの小さな子供が帰宅後にアイスを食べながらふと見たテレビでバンドの演奏を見たことをきっかけにアイスのことなんてすっかり忘れるかのように夢中になっていく様を描いている。段ボールにギターを描いて切り抜いて弾くマネをする。エアギターだ。最初はギターを弾いているマネを出来るのがいいんだな。昨今はエアギターというのがひとつの表現として確立し始めているし、そういう意味で…(レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 椎名林檎
『青春の瞬き』
 今でも天才だと思っている。だが、椎名林檎は最初の頃に抱いた天才への期待を未だに超えていない。それは大きな期待を抱く側の罪か、それとも持てる才能を出し切れずにいる側の罪か。はたまたそんな期待を抱くには足りぬ凡才でしかない者の罪なのか。その場合は凡才に罪は無く、無理な期待を抱いたりする側にのみ罪はあるのだが。… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 yEAN
『会えたらいいね』
 会えたらいいねというのは、もうずっと会えないのが当たり前で、もしも万一会えたならそれはイイねということを言外に示しているのだろう。いつも一緒だった人と別れる日が来るというのには理由があって、一度別れてしまえばもう会えなくなってしまうと考えるのは道理である。しかしながら会えなくなってしまうと明確に思ってしまっては別れが悲しすぎるから、「会えたらいいね」というこの言葉は… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 黒沢健一
『So What?』
 無邪気に、軽やかにスイングするロックンロールに持ち上げられることは日々、あると思う。そういう意味では、過去に於いて、もしも、L⇔Rからその後の数多くの名義での活躍も知っている人以外にも、現在の彼の拓けた姿やシンプルにバンド・サウンドを追求する中で伸びやかに歌うさまはなおさら、届く気がしてならない。メロディー・メイカーとしてのみならず、博覧強記な音楽的語彙を巧みにステージの向こう側へ… (レビュアー:松浦 達
 

 
10位 THE CHARM PARK
『そら』
 清々しい音楽を久しぶりに聴いた気がするとともに、こういう音楽で始められる新たな年のはじまりもいいのではないかと思う。“清々しい“という表現を変えるのならば、勝手などこかの決まり事、上意下達の従属意識を爽涼に越えるような―  喧しく世の中では、ボーダーレスやテクノロジーがもたらす自由さ、エスニシティ等を巡っての問いが剥き身のままに投げかけられ、本来、それに応じた纏うべき衣服、理論、感受性の… (レビュアー:松浦 達
 

 
次点 毛玉
『しあわせの魔法』
 こういうイージーリスニングみたいなテイストのサウンドに怪しげな歌を忍ばせてしまうというのは、一体どういう心境というか、狙いなんでしょうね。いろいろな音源を聴いてみるとどれもやはり怪しげな影。でも実験的というか忍ばせ系の意図が先行して、そんなに忍んでないじゃんという感じのある意味意欲的な怪しげ感が多いような気がする、特に昔のヤツ。でもこの曲は怪しげであろうとする想いがちょっと引っ込んで… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 ザ・ラヂオカセッツ『東京』:2014年のレビューが2017年最初の1位に! Twitterで定期的にツイートしている「過去レビュー紹介」にアーチスト自身が反応して、そこからファンの人たちに拡がっていき、堂々のアクセスランク1位になりました。こういうの、嬉しいですね。毎日レビューを公開しても古くなったら誰も見向きもしないというのは哀しいしもったいないですから。こういう過去のレビューが再浮上することで、ザ・ラヂオカセッツのことを知ってくれる人が出てくればもっと嬉しいです。

2位 エレファントカシマシ『RAINBOW』:昨年12月のアクセスランク1位に続いて、今月は2位に。エレカシのファンは熱心というか、情熱的なんですね。アーチストからすればこんなに心強いファンはなかなかいないのではないかという気がします。

3位 緑黄色社会『またね』:1月半ばに公開したレビューが第3位にランクイン。通常はレビュー公開時にガーッとアクセスが集中し、やがて少なくなっていくという感じなのですが、この緑黄色社会の場合は、レビュー時にもそんなに大きな動きにはならず、しかしずーっとアクセスが続いてて、月間では3位に入るほど。これから来るバンドなのでしょうね。だから日々いろいろな人が検索などして辿り着いてくれるのでしょうね。

4位 羊文学『春』:アクの強いガールズバンドが4位に。メンバーが抜けたばかりで今後の活動が流動的ながらも、そのアクの強さに期待して、どんな形でもいいから復活して欲しいというファンの想いが伝わって来るようでした。

5位 Sentimental boys『グッドバイ』:レビュー直後からメンバーが早速反応してくれて、その結果デイリーのランキングにも入ってきて、そのランキングにもメンバーが反応してくれて、またアクセスが増えるという好循環。わずか1週間の集計で5位だったのですが、今もアクセスは日々あるので、30日単位で集計していればもっと上位だったかもしれません。まあ順位の上下はともかく、とても良い曲だったなあと思いますし、サビのフレーズが頭から離れません。

7位 椎名林檎『青春の瞬き』:有名アーチストの割にはそんなに伸びず。今月は宇多田ヒカルのレビューもあったんですが10位以内には入らず。こういうのがmusiplらしいといえばらしいですな。いや、椎名林檎も宇多田ヒカルも天才ではあるんですけどね、ランキングはそれとは関係なくw。

 2017年、あけましておめでとうございます。って、もう2月ですけども。まあなんというか、京都は寒いです。日本全国そうでしょうか? しかし夕方も徐々に明るくなってきてて、日が長くなったなあと思います。みなさんも風邪などひきませんように。花粉が本格化するまでの間、健康にお過ごしください。

(大島栄二)