2017年のmusipl.comでの10月アクセス数上位10レビューはこちら!


 
1位 高橋優
『素晴らしき日常』
 高橋優のメガネルックスがシンガーにとってプラスになるのかマイナスになるのかなんて下卑なことをついつい思って以来もう6年。現状から結論すれば、マイナスになんてまったくなりませんでした。それはやはり歌の良さが何より重要ということの証なのかもしれません。この人の歌を批判を恐れずに要約してしまうと、「自分に正直にあれ、そして正直であった結果負けたってそれは負けじゃない」ということでしょうか… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 CuBerry
『光の街』
 なんだろうこの軽やかさ。この数十年で音楽には様々なジャンルというものが生まれて細分化されてて、その中で自分たちはどのような立ち位置で音楽を生み出すのかということを多少なりとも考えるということがもはや必然となっていて、なぜなら、それを考えなければ新しく生み出したはずのオリジナルソングが実は既に誰かが作っていたものの二番煎じであることから逃げられないからです。いや、考えたからといって… (レビュアー:大島栄二)
 

 
3位 空中メトロ
『Take off!』
 空中メトロ、キュートだなあ。この曲とほぼ同時期に公開された『undying love』では衣装を着てスタッフに囲まれてスタジオで撮影するというシチュエーションのMV。それと較べてこの『Take off!』ではかなりナチュラルな風情。いや、この広い体育館のような場所を借り切って撮影するわけだから、ナチュラルとはいってもスタッフの存在がないわけはないのだけれども、ビデオの雰囲気は両極端といっていいくらい… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 コシモトユイカ
『暴力とガラスと』
 キュートなルックスの女性ボーカルがアコースティックなサウンドで歌い始めたあたりで、もう騙されてる。歌が進むにつれてこの人の毒に、刺に、支配されていくような魅力に足がすくむ想いになる。あなたの心に刺さりたいと言い、ストリートライブでは今日こそブッ刺しますと宣言をする。だが、この人の刺は、聴いている人に刺さっていくのではなく、まず、自分自身に刺さっていくのだと感じる… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 印象派
『球状』
 これまでビートの効いたダンスミュージック(?)を凝ったMVとともに世に送り出してきていた(と僕は思っている)関西の女性2人ユニット印象派の、この新曲はいったい何なんだろうか。ニューアルバムの中から以前に公開されていたMV『檸檬』は京都の風景を背景にしてそれまでのダンスミュージックを披露していたのだが、同じアルバムに収録されているこの『球状』では一転してまったく違った雰囲気と曲調… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 UP BEAT
『Kiss in The Moonlight』
 UP BEATは1980〜90年代当時どのような立ち位置として認識されていたのだろうか。ビジュアル系という言葉もまだ明確に確立されていたわけでもなく、だからXもBUCK-TICKもUP BEATもざっくりとした大きなカテゴリーの中の中にいるバンドとして見られていたのではないだろうか。それはバンドの顔であるボーカル広石のルックス、バブルが崩壊する前の日本全体的にゴージャスなファッションなどからそう… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 ミズニ ウキクサ
『凍る海』
 ベースとドラムの2人という組合せが自由だなあと感じさせる。ギターの音は鳴っているのだしMVの中にもギタリストが映っているわけで、サポートという形での必要な音の手当はするのだろうけれど、固定メンバーはベースとドラムだけでOKというのは、ライブなどの活動では毎回大変さを抱えるだろうけれども、音楽を作る上での自由度を獲得する上では案外理想的な構成といえるのかもしれない… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 絶対直球女子!プレイボールズ
『絶対直球少女隊』
 今の世界情勢ってどうなってるのか誰かガンダムに例えてくれないか?今回の選挙ってプロレスでいうとどういう勢力図?自分に対するフックが2、3個あればスーッと理解できるんですよ。それで、若い子たちが何話してるか意味不明って敬遠してる松坂世代のおっさんにも優しいこのアイドル絶対直球女子!プレイボールズ。どれだけピンチか、どれだけチャンスか、どれだけ真剣か!全部野球語で打ち込んでくる… (レビュアー: 北沢東京)
 

 
9位 SUKISHA
『4分半のマジック』
 ファンクだ。でもどファンクではなくて、ポップなファンク。30年くらい前に久保田利伸が出てきた時となんか似てる。日本でやっとロックバンドが市民権を得始めたあの当時の日本の若者に対して久保田のファンクが与えたインパクトと、現代のようにあらゆる音楽性が溢れている中でSUKISHAが与えるであろうインパクトを比較するのはあまりにも不公平な気がするが、今の人が30年前にタイムスリップすることが… (レビュアー:大島栄二)
 

 
10位 BECK
『Dear Life』
 いいタイミングで、いいムードのベックが戻ってきたなとこの曲を聴きながら、待望のアルバムには話題になった「Dreams」、「Wow」が含まれてながら、タイトルが『Colors』というのも期待が膨らむ。ブルージーでメロウな彼もいいのだが、こういうどこかフリーキーで跳ねた彼こそライヴの舞台での食卓でディナー風の演出をしていたような真骨頂の一端が見える。かの「Loser」で一躍… (レビュアー:松浦 達
 

 
次点 mock heroic
『恋をする』
 もうホントにストレート。行間を読めよというような含みを持たせまくった歌詞の曲も多いしそういうのも好きなんだけれど、こういう「行間なんてねえよ、歌いたいことはそのまんまで歌ってるぞ」というような曲に出会うと瞬時にハッとするし、妙に嬉しくなってくる。恋をするっていうの、そんなに複雑なことでもなくて最初に見た瞬間の印象が100%みたいなこともよくあることで、そういう点ではこういう… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 高橋優『素晴らしき日常』:高橋優、人気ありますね。10月ではダントツのアクセス1位。2位にトリプルスコアくらいのダントツぶり。レビューの冒頭でデビュー当時彼のメガネルックスをどうなのかと思ったなんてことを書きましたが、本当にそんな下世話な心配は余計なお世話。つい先日息子の保育園運動会では彼の『明日はきっといい日になる』が使われてて、本当にポップで明るくて前向きなメッセージで、子供たちにもきっとプラスの何かを与えてくれるだろうなという気分になりました。こういうアーチストの成功は単なるリスナーとしてもいい気分になるものですね。

2位 CuBerry『光の街』:1位の高橋優に較べればまったくの無名といってもいい彼女たち。でもレビュー掲載をメンバー自身が喜んでくれて何度もツイートなどしてくれて、デイリーアクセスランキングにも割と長期ランクインしてて。そういうことの積み重ねでマンスリーランクでも2位に入りました。いつも言うんですけど、musiplでこうして拡散していける人たちは大きなメディアに出たらもっと拡散していくのでしょうし、musiplで拡散できない人は大きなメディアに出る機会を得ても、人気拡大のために有効に利用していくことはできないのでしょう。音楽のクオリティは大前提ですけど、それがほぼ同じ力だった時に、勝って有名になっていくのはこういう拡散力の違いなのだと思います。もちろん、彼女たちの音楽はサイコーです。どんどん伸びていってください。

3位 空中メトロ『Take off!』:空中メトロもメンバー自身と、それとファンも多かったのでしょうね、SNSで結構拡散していました。空中メトロは解散が決定しているんですけど、それでもメンバーが拡散しようとするのはエラいなあと思いましたよ。それは彼らのこれまでのファンに対する誠実さの現れだと思うし、解散後に個々のメンバーがそれぞれの音楽活動を続けているのであれば、新しい活動に空中メトロ時代の行動が必ずつながっていくはずですし。次の活動でも頑張ってください。応援したいです。

4位 コシモトユイカ『暴力とガラスと』:ダークな叫びにも似た歌唱が印象的なコシモトさんが4位に。こういう危うさを持っているアーチスト、けっこう好きです。ダークさを持つ以上いろいろと不器用さがあるのは当然で、そういう人の歌には、同じように不器用さを抱えている人たちの心の支えになっていく力があると思うのです。この人が将来大きな影響力を獲得していけるかは未知数ですが、伸びていけばいいなあと心から思います。

8位 絶対直球女子!プレイボールズ『絶対直球少女隊』:北沢東京さんレビューのグループが、たった2日間で8位にランクイン。本日(11月1日)、デイリーでは1位です。勢いあるんでしょうね。北沢東京さんがレビューするアーチストは本当にジャンルもカテゴリーも超えてユニークで特徴あって、自由だなあと思うのと、音楽への愛を感じます。今後も代注目してくださいね。

10位 BECK『Dear Life』:松浦さんレビューのBECKが先月に続いてランクイン。10月は少々お休みの感もあった松浦さんですけど、11月にはまたたくさんレビューしていただける予定ですので、乞うご期待!

 10月のどこかで、musiplのTwitterに「これちょっと違うんだよなあ」といったリプライをいただいてちょっと凹みました。いや、そこまで凹んでるわけではないですけどね。音楽の評価や感じ方は答えがひとつというわけではないし、すべてのアーチストの一挙手一投足を全部ウォッチすることも不可能なので、事実誤認することだってあります(というか、しょっちゅうです)。それでもめげずにレビューするのは、レビュアーがアーチストのスタッフでもなくて単なるいちリスナーの立場で書いているという自負があるからです。ある曲にリスナーが出会う状況は様々です。偶然ラジオで流れてきて聴いた、Spotifyのプレイリストに入ってた、YouTubeの関連動画で出てきたからクリックしてみた、好きな番組のテーマソングだった、友人のバンドの曲だった、等々。そういう時に曲やアーチストの背景をどのくらい知っているのかも様々です。ほとんど知らないで、ただ曲を1度聴いただけということもあって、そういう場合に曲に何かを感じてはいけないのかというと、そんなことはもちろんありません。何も知らなくったって感じていいのです。それを漠然と感じるだけでも、具体的な文章にしても、いいのです。musiplのレビューは、そういうものだと思うのです。
 大手レコード会社の宣伝の仕事をしていた頃、例えばラジオにゲスト出演をする場合には事前に資料を渡して、本番前にはDJの人とアーチストで打合せをします。そういう「正しい」情報を知ってもらった上でDJの人がいろいろと喋る。それはもちろんいいことですが、じゃあ普通のリスナーはどうなのかというと、そんな「正しい」資料なんて見ないのです。それで正しくはない感想を持つこともある。それもいいと思います。あるリスナーはデビュー前から欠かさずライブに行っていて、音源も全部聴いているでしょう。そういう人はDJが「正しい」資料で得た付け焼き刃の知識などとても及ばないような背景情報を知っているでしょう。そういう人が到達する曲の感想はとても価値があります。しかし、背景を知らないリスナーが感じるものには比較して価値が無いのかというと、それは違うでしょう。
 musiplには、あまり知られていないミュージシャンの音楽を紹介したいという想いがあります。その想いでやっているので、まったく知らないミュージシャンの曲を紹介する時には、初めて聴く普通のリスナーと同じ立場で同じ気持ちでレビューを書きます。それは場合によっては熱心なファンリスナーからすると「けっ、まったく違うよなあ」と思われるような内容のこともあるでしょう。しかし、背景を知らないで普通のリスナーが感じることにはいろいろなバリエーション(時にはまったく誤解した感想)があるはずで、そういう誤解が生じたとしても、発信された曲にはそういう誤解を生む要素があったということでもあり、そうなってくると、誤解は実は誤解じゃないということでもあるでしょう。アーチスト本人が意図していない解釈が自然発生的に生まれて、その誤解がアーチストの新たなキャラクターを生むということもあります。そうやっていろいろと広がっていくというのは、とても面白いことじゃないかなあと、そんな気持ちです。

 それでも、「いやいや、そうはいってもまったく違うよ、このアーチストのこの曲の解釈はこれが正しいんだよ」と不満が募る熱心なファンもいらっしゃるかと思います。そういう人は、ぜひ「セルフレビュー」をしてください。musiplではファンやアーチスト本人が「セルフレビュー」することが可能です。もし、musiplの公式レビュアーのレビューに我慢ならないという方がいらっしゃれば、そのセルフレビューで反論を、反論というか、正しいレビューをしてください。そういうやり取りが増えれば、音楽シーンに多少なりとも寄与していけるのではないかと、ちょっと思います。
 もちろん、Twitterで「違うよ、まったく違うよ」とリプしていただくだけでも歓迎です。そういうのを目にして、ちょっとだけ凹んだりしつつも、へこたれずに前進していきたいと思いま〜す 。

(大島栄二)