UP BEATは1980〜90年代当時どのような立ち位置として認識されていたのだろうか。ビジュアル系という言葉もまだ明確に確立されていたわけでもなく、だからXもBUCK-TICKもUP BEATもざっくりとした大きなカテゴリーの中の中にいるバンドとして見られていたのではないだろうか。それはバンドの顔であるボーカル広石のルックス、バブルが崩壊する前の日本全体的にゴージャスなファッションなどからそう見られたのもある意味自然な流れだっただろうか。ベースとしてはデカダンな少し暗いトーンの曲を柱としつつも、メロディは実に多様で豊かで、今聴いても時代遅れを感じさせない曲が多いし、おそらく今のシンガーがカバーしても十分に通用するだろう。この「KISS IN THE MOONLIGHT」以外にも「Rainy Valentine」や「All Right」とか、良い曲多数。しかし広石の歌唱力や岩永凡のギターセンスとは裏腹に、最初の登場の仕方が若干アイドル的な押しだったことなどから音楽ファンの間での評価はブレていたのではなかっただろうか。ビクターで宣伝を担当していた頃、担当していたラジオ番組の収録のために広石と2人で現場に向かうことが月に2度あった。全国的な人気を誇っていたにも関わらず、僕の軽自動車で移動することもまったく厭わず、音楽活動の夢や課題を熱を込めて話してくれていたことを思い出す。とにかく熱い男で、僕は次第に人間としての彼のファンになっていった。広石は今も音楽活動を続け、ライブハウスのステージに立ち続けている。