Death From Above『Freeze Me』
オモイメグラス『earphonic』
SUKISHA
『4分半のマジック』
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ファンクだ。でもどファンクではなくて、ポップなファンク。30年くらい前に久保田利伸が出てきた時となんか似てる。日本でやっとロックバンドが市民権を得始めたあの当時の日本の若者に対して久保田のファンクが与えたインパクトと、現代のようにあらゆる音楽性が溢れている中でSUKISHAが与えるであろうインパクトを比較するのはあまりにも不公平な気がするが、今の人が30年前にタイムスリップすることができない以上、そもそも違う状況の中で闘うしかないのは当然だろう。もちろん、テレビやラジオに取り上げてもらう以外に自分の音楽を広げる方法がなかった当時と較べ、こうして自分で発信する方法もあるので、マイナスばかりということでもないのだし。このSUKISHAというのはシンガー・トラックメイカーの池澤寛行によるプロジェクトらしく、要するにソロユニット。MVを見てもすべての楽器にメインボーカルからコーラスまで全部自分でこなしている。こういうのは機材的に十分可能になっているのだけれど、いざやってみるとすべてを完璧にできる人はなかなかいない。でもこの人は完璧にこなして見事なファンクトラックを生み出している。ただ、この人がファンクの人なのかどうかはよくわからなくて、例えば昨年池澤名義でアップしている
『不自由な正解』という曲ではむしろアコースティックなロックバラードを披露
している。これ、カッコいいんだな。「誰かと諍いをするのも面倒だから作り笑い」と歌う。音楽を始めて、本当にアコギ1本で勝負するなら別だけれど、普通はメンバーを探してバンドを組む。だがいくら最初は同じような音楽が好きだと思って集まっても結局は個人個人で趣味も違うし生活も違う。バンドマンのほぼすべてが悩むところで、自分の音楽を明確に持っているほど悩みは大きい。それでバンドが解散して打込みに向かうという人も多くて、でも頭ではバンドサウンドが鳴っているものだから、打込み機材をステージに持ち込んではスタートボタンを押してギターを弾き語るというのはとてもよく見かけるライブ光景だ。この池澤さんがそういう経緯でこのSUKISHAに至ったのかは定かではない。でも、こういう技術を駆使して、100%自分の思う音楽をクリエイトすることができるというのは、30年前と較べて大きなアドバンテージだ。個人的には池澤名義でやっていたフォーキーなロックバラードの方が好きなのだが、しかしそれではライバルも多く、1歩リードすることも難しかったのだろう。そういう意味で、こうしてファンクなサウンドでまずは注目を集めてからというのは戦略としてもアリなのだろう。頑張ってほしいなあ、ホント。
(2017.10.12)
(レビュアー:大島栄二)
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