2015年のmusipl.comでの9月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 博せ(関口知宏)
『AIR』
 父は司会者で俳優・タレントの関口宏、母は元歌手の西田佐知子、祖父はかつての映画スターである佐野周二。関口知宏と聞くと、「俳優」であり「鉄道で旅をしてる人」のイメージが強いかもしれません。そんな彼が、突如 ”博せ”として音楽家デビューし、俊足で売上げランキング2位を叩き出し、世間を賑わせています。そもそも”博せ”ってなんですか?という話なのですが、世界に誇れる日本の… (レビュアー:本田みちよ)
 

 
2位 小林未郁
『僕のお葬式』
 静かに淡々と歌っている。日々ロックバンドの情熱を振りまく歌に接していると、こうして淡々とした歌が新鮮に聴こえる。だが淡々と歌っているだけで内容としてはけっこう毒を含んだものを歌っている。こういうの、好きだ。表現には人間っぽい毒や暗さを含んでなければ薄っぺらくなる。いくら美しくても、薄っぺらいものはつまらない、と思う。この小林さん、アニメの曲なども多数歌ってるようで… (レビュアー:大島栄二)
 

 
3位 プラズマ JAP JET
『Rollin Rollin』
 軽快に音が流れる。そのバンドのHP、BIOコーナーに書かれた宣言のような言葉が示しているのは現代の何かに対する明確な意思表示。そういうものを真正面からシュプレヒコールしようとすると重たい空気が支配してしまうのだけれども、このロックバンドのこの歌はとても軽快で、ああ、軽やかに問題を考えたって別にいいんだという気持ちにさせてくれる。メロディも音も軽く、いや、軽いと言っても… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 SANABAGUN
『人間』
 TV放送のアニメ制作者の「ベッドシーンはNGなので、代わりに男女の食事シーンを意図的に入れてる」との話に、メジャーの難しさは規制の枠、それを感じさせない表現かと。深夜フリートークで「こんな雨の日は一日中部屋で彼とヤりまくりたい」と気さくに話す歌姫も、メジャーではカブトムシやテトラポットに置き替えて「こんな夜にお前に乗れないなんて!」的に暗号化する訳で。サナバガンの1stメジャーアルバムの… (レビュアー:北沢東京)
 

 
5位 fuyuco.
『花のあと』
 ピアノの音と女性ボーカルの歌。草っぱらで歌っているビデオなのだが実際の現場にピアノはないし、風が吹く音、揺れて草が擦れる音が辺りを包んでいることだろう。しかし人間の耳というのは聴きたい音だけを聴き分ける能力を持っていて、普段の暮らしの中では発揮されないそういう能力を、いい歌は、引き出してくれる力を持っている。だから風の音も草の音も消え、あるはずもないピアノの音が聴こえてくるような… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 稲垣淳一
『中年男のつぶやき〜会社編〜』
 週の初めから、月の初めから、こんな曲を聴くとみんな仕事に行きたくなくなってしまうのではないかという心配はあるのだけれど、そんなダークで憂鬱なテーマをポップでファンクで飄々と表現し、かといって過度に現実逃避で無理矢理な明るさなどに行くのではなく、リアルな感情の吐露として聴かせてくれるのは、稲垣淳一の非凡で奇才であることの証だろう。実際にサラリーマン生活ン十年という40代男が… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 EHONN
『サマードラッグ』
 音楽をやっているのだろうか。それとも呼吸するように音楽をしてしまっているのだろうか。ただ歌うだけというのとは違って、音楽を奏でるにはそれなりの準備が必要で、だからただ歌を聴いている人からは見えにくいところで、水鳥が水面下で水をかいているような努力があるのだというのはよく言われること。確かにそうだと思う。リハーサルのないパフォーマンスなんてものは存在しない。では、水鳥はリハーサルをして… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 矢野顕子
『そこのアイロンに告ぐ』
 先日聞いた話では、最近の幼稚園ではトイレの後で水を流さない子供が増えているという。なんで流さないのかと聞くと、逆になんで流すのかと不思議そうにする。理由は簡単で、その子の家のトイレは自動で流れるタイプの最新式。手動で流さなければいけないという概念がないらしい。この歌では赤ちゃんのオムツを早く乾かさなきゃいけないお母さんが、アイロンに「ただちに熱くなれ」と言う。洗ったオムツは… (レビュアー:大島栄二)
 

 
9位 The Street Sliders
『SLIDER』
 ストリートスライダーズはカッコ良いバンドだった。何がどうカッコ良かったのか、いま考えてもよくわからない。強いて言えばハリーと土屋公平"蘭丸"のギターが抜群にかっこよかったということだろうか。だが、そんな言葉ではあのカッコ良さは説明がつかない。ギターのカッコ良さなら蘭丸がスライダーズ解散後に結成した麗蘭の方が断然華やかなギターの組合せだ。だが、スライダーズの組合せにはかなわない… (レビュアー:大島栄二)
 

 
10位 WOMCADOLE
『綺麗な空はある日突然に』
 曲の展開がAメロBメロサビサビダッシュ的な古典的展開であるということから逃れようと複雑な展開やリズムに向かうバンドもいれば、歌モノであることから逃れようとインストに向かうバンドもいる。もちろんその意図がそういうものではなく単純にそういう音楽が好きということであるのかもしれないけれども、ほとんどの人が幼少期に古典的展開の童謡を聴いて基礎を作っていくことから考えれば… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 谷口晴菜
『正直な嘘』
 不思議な響きのする声だ。いや、こんな声は数多あるアイドルボーカルの中にあるだろうという反論も聞こえてきそうだ。でも、それにはあえて否と言いたい。出だしの言葉がガツガツとしていない。セオリーから言えばもっと声を張れよということになるのかもしれない。だが、張るよりもジワリとスーッと確実に響いてくる。そこから曲が盛上がるにつれて声の音量は大きくなっていき、インパクトはあるのだが…  (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 博せ(関口知宏)『AIR』:関口知宏? ん? 電車に乗ってる人? と思いましたが、レビュアーの本田さんも冒頭でそう紹介されてましたね。もし「博せ」だけだったら「誰だコイツ?」って感じだったでしょうけど、まあmusiplで連日紹介しているバンドの大半は「誰だコイツ?」なので、博せだけでも問題はなかったでしょうし、アーチスト名を知らずに曲を聴くと「ん? 田島貴男?」ってかんじのイカしたポップロックなので、かえってアーチストとしての評価につながりやすかったのかもなと、個人的には思ったりします。

2位 小林未郁『僕のお葬式』:世界で活躍するフリーランスのシンガーソングライター小林未郁が第2位にランクイン。淡々とした歌が新鮮に聴こえた初聴きの時を思い出します。最初facebookのリンクを個人のアカウントに貼っていて、その後アーチストページがあることに気がついて、その確認をご本人とさせていただいた時も、実に気さくかつ誠実に対応してもらって、それだけで好感度100倍です。フリーランスでイバラの道を邁進中の人はやはり人間性も出来ていらっしゃる。ますます成功していってほしいものです。

3位 プラズマ JAP JET『Rollin Rollin』:重たいテーマを軽やかなサウンドで表現できる、とってもカッコいいバンドです。他の曲もカッコいいので、ググるなりして聴いてみるといいですよホント。そしてライブに行ったりするともっといいですよホント。

4位 SANABAGUN『人間』:レビュアーの北沢東京さんはいつもユニークな視点で選曲してくれるので毎回期待しているんですが、このところはメジャー展開と歌詞表現の関係に着目されているのでしょうか。この曲もやっぱりユニーク。ユニークな歌詞にするということが、守りなのか攻めなのか、その辺をどうしても考えさせられるわけですが、攻めでも守りでもない曲を作ったところで面白くなくて売れもしないので、やはりこれは攻めの一形態なのだろうと思います。そういうところを紹介してくれる北沢東京さんに今後も要注目です。

5位 fuyuco.『花のあと』:Twitterでフォローしたら挨拶DM送ってきてくれて、なので曲聴いてみたらなかなか良くて紹介してみました。でも挨拶DMを自動で送るツールはあるので、どうせ見てくれてないだろうと思っていたらちゃんと見てくれていたようで、即座にリツイートと喜びツイートをしてくれて、なんか嬉しかったです、そういうの。曲を紹介してもまったく反応しないアーチストも多くて、それでは話題は広がらないしアクセス数も伸びない。別にmusiplだけのことじゃなくて、他で取り上げられた時にもきっと同じことだろうし、仮に音楽が良くても広がっていかないだろうなと思います。その点、fuyuco.さんのように拡げる動きが出来るアーチストは、チャンスを最大限にしていけるのだろうなあと思ったりしました。

7位 EHONN『サマードラッグ』:ナチュラルな表現とナチュラルな活動をしているアーチストEHONN、何の偶然か、レビューを公開した日の午前中に「交通事故に遭いました」というツイートをしてて、なんか焦りました。いや僕事故には無関係なんですけどね。皆さん本当に事故と健康には注意してください、ホントに。

 今月も6位に稲垣淳一の会社に行きたくないソングがランクインして、みんな会社に行きたくないんだなあというのが実感されます。そうはいっても仕事はしなくちゃいけないですしね、皆さん頑張ってください。僕もなんとかやっていきますよ。

(大島栄二)