2016年のmusipl.comでの9月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 あーた
『各駅停車』
 シンプルに、いい。特徴のある声はボーカルが生き残るための必要条件であるものの、この歌を聴いて胸に迫るのは声の特徴ではない。非常にシンプルだけど感情のこもるメロディと、強い意思を感じられる歌詞である。このビデオでは緑色の服を着た女性が電車に乗って物思いに浸っている。あーたというシンガーはこの人なのかなと思っていると、ピアノ弾き語りからバンドサウンドに変わった直後に赤い服のギターを抱えた… (レビュアー:大島栄二)
 

 
2位 おぐまゆき
『音楽』
 なぜ響くのだろう、おぐまゆきという人の歌は。実際に会ってみるととても寡黙な人で、寡黙というより、人と話すのが苦手らしい。だったらコミュニケーションはおろか表現などできるはずも無かろうというのがまったくの間違った先入観で、この人は自分の心の中にある何かを表に出そうと懸命になっていく。それがたまたま歌という形になったに過ぎない。
 最近ある友人と毎日のように語らっていて… (レビュアー:大島栄二)
 

 
3位 オールドタイマー
『Jelena』
 懐古系シューゲイズというらしい。シューゲイザーというのはどんなジャンルだと一言でいうのは難しくて、彼らのは結構ポップ方向に振り切れているなあと思う。とはいってもいわゆる普通のポップとは違うということは聴けば解るはず。ポップというのはかなりダイレクトに心を締め付けたり感情を揺さぶりにくるタイプの音楽であることが多いけれども、このシューゲイザーなポップでは音楽と心の間に靄のようなものが… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 満島ひかり
『ミルク32』
 この人は本職の演技の方でも高い評価を集めてて、こういう歌の方面でもCMなどでいろいろな人の歌を歌っている。で、いずれも上手い。上手いなんて表現が適切かというと多分適切ではなくて、もはや歌そのものになりきっているという印象だ。だから心に響いてくるのだろう。最近無名のバンドが有名な歌をカバーしてYouTubeに上げるというのが増えている。無名バンドがオリジナルを歌っても… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 中田裕二
『ひかりのまち』
 2011年の3月の時期には多くの声のみならず、歌と映像が行き交った。その中では偽善、売名行為だと揶揄されたものもあった。しかし、そういった瞬時の荒波も歳月とともに容赦なく攫われ、報道されるべき何かの優先順位はいびつさを増している。痛ましい事件はすぐに伝わるべきだとも思う。世界的に成功した人たちの声はすぐに届くべきだと思うが、そこでさて、と疑問符もつく。あの日から何が変わったのか、いや… (レビュアー:松浦 達
 

 
6位 クウチュウ戦
『ぼくのことすき』
 さりげなくブッ飛ぶという独自の境地を驀進するクウチュウ戦。このビデオはその境地も極まったなという感が強くて本当に好き。プログレバンドとばかり思ってて、2年前にmusiplで紹介したときも「泣きのプログレ」と自称してたことが書かれてて、1年前の「追跡されてる」でもプログレ感はまだまだ健在で、しかし今年2月の「雨模様です」ではフォークロックか?と突っ込みたくなるテイストを押し出し… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 イ・ラン
『世界中の人々が私を憎みはじめた』
 淡々と歌われる歌の心地良さ。チェロなのかコントラバスなのか、弦楽器が最小限の旋律を添えて、アカペラとは違う盛上がりを後押ししてはいるものの、基本的な部分での彼女の歌声のストレートさに力がある。それは演出によって生み出されるような表現力ではなく、イ・ランというシンガーが持っている地の力なのだろう。その淡々力が軽やかに歌っているのを、韓国語を知らなければ(僕も知らないし)ただ軽やかな… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 正山陽子
『旅立ちの歌』
 新しい春、変化の季節ということで、相応しいものを。昨今の各アーティストやバンドなどのリリック・ビデオにはハイパー・インフレ的になってしまっていて、それを称するに市場決済単位の「言語」と認証されているのに、その「言語」をすぐにディスクローズする際による誤配に対してのシンギュラリティを分かり得ないのではないか、と思いもするが、ニュージャズに称されているものの、今の正山陽子のこの… (レビュアー:松浦 達
 

 
9位 BUCK-TICK
『New World』
 BUCK-TICKがビクターに復帰する。メジャーデビューから29年目に古巣に戻るというニュースはそんなこともあるのかと個人的にとても感慨深いものだった。デビュー前、表参道のあちこちに貼りまくられた「バクチク現象」の白黒のステッカー。そこから29年メンバーチェンジをすることなく、常に第一線で武道館を埋めるパワーを持ち続けている。そんなバンドは滅多にいない。一度レーベルを移籍すると元の場所にはなかなか… (レビュアー:大島栄二)
 

 
10位 こどもランドリー
『サイダーの曇り空』
 なんか好き。どこが好きなのかというと、コーラスで入ってくる女性ボーカルの声だ。プロフィールから想像するとギターのmariさんの声だろうか。この頼りなさげな揺れる声に、それでも声を出すぞみたいな小さな決意を感じたりする。最初のソロパートで「いつもどこかで鼻歌を待っている」と歌ってて、そうだよなあ、この鼻歌みたいな歌が聴きたいんだよなあと思わせてくれる。正直言うとそれ以外には特にどうと… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 yonige
『アボカド』
 バンド名がどんどん変な方向に行くのは、やはり検索してもらってナンボという考えが浸透しているからでしょう。昔だったらそれバンド名なのかと思うような、文章ですかというようなバンドもたくさん出てきて、じゃあかえって短いバンド名の方が目立つんじゃないのと思ったりもするけれども、短くてありふれた名前であれば、やっぱり検索で引っ掛からなくてソンだったりします。そりゃそうでしょう… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 あーた『各駅停車』:レビュー公開からしばらく経ってからの突如のアクセス集中で堂々1位に。あーたさんご本人がエゴサーチしてひっかかったらしく、慌ててリツイートなどして、それでファンの方にアクセスしていただいたようです。本人も「たまにはエゴサーチしなきゃ」とツイートしてましたが、ホント、アーチストのみなさんはエゴサーチして、リツイートとかした方がいいです。

2位 おぐまゆき『音楽』:最初のCDをリリースしてから日本中ライブ旅してるおぐまゆきさん。もう日本を何周したのでしょうか。地道ながらも淡々としたコンスタントな活動が、着実にファンを増やしている様子で実に頼もしい。こういう人の歌が、気付かないうちに多くの人の心に染み渡っていくのだろうという気がします。

3位 オールドタイマー『Jelena』:8月最後に公開したレビューが9月のランクに入りました。8月の公開日から1ヶ月だったら2位に入る数字で、分散してしまい申し訳ない気分。それでも3位ランクインなのだから堂々としたものでしょう。ささやくような声とテンポあるメロディがとても心地良い曲でした。

6位 クウチュウ戦『ぼくのことすき』:クウチュウ戦はホントに変なバンドですよね。何度見ても飽きないし、どの曲を聴いても一律な変さ具合ではないのがすごいなあといつも思います。一律でないからスタイルとして一言で言えないのが紹介する側としては歯痒さもありますが、じゃあ一律な変さでしかなければ面白みもそこそこなわけで。なので、この紹介しづらい変なバンドというのがやはりいいのだと思います。

7位 イ・ラン『世界中の人々が私を憎みはじめた』:淡々とした歌が心に染み渡る韓国のシンガー。ネットには日本語の字幕付きの動画と字幕無しの動画があって、日本市場を意識した展開なのだろうなあと感じますが、それがどのくらい伝わるのか。歌われている内容の背景がどのくらい普遍的なのかによるのでしょうが、この曲は僕にはとても響いてきたのです。

9位 BUCK-TICK『New World』:2年前に土曜日枠で紹介したBUCK-TICKの新曲。古巣のビクターに戻る第一弾ということで、個人的にもかなり胸熱でしたショートバージョンだけしか公開されていないので、ファンの方はDVD付きCDを買ってご覧ください。

 いやあ、9月のアクセスランキング記事を作るのを忘れてました。いけませんねえ。もっとちゃんとやりたいと思います。ちゃんとやらなきゃいけませんね。反省しています。

(大島栄二)