Teenage Fanclub『I'm In Love』
CICADA『YES』
イ・ラン
『世界中の人々が私を憎みはじめた』
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淡々と歌われる歌の心地良さ。チェロなのかコントラバスなのか、弦楽器が最小限の旋律を添えて、アカペラとは違う盛上がりを後押ししてはいるものの、基本的な部分での彼女の歌声のストレートさに力がある。それは演出によって生み出されるような表現力ではなく、イ・ランというシンガーが持っている地の力なのだろう。その淡々力が軽やかに歌っているのを、韓国語を知らなければ(僕も知らないし)ただ軽やかなハミングとして耳に流れていくだけなのだろうが、こうして字幕を通して歌の意味を噛みしめるように聴くと、苦悩は既に日常に普遍的にあるものなんだなあと驚く。韓国はもちろん日本と文化を異にしていて、同じアジアだと一括りにされると本質を見誤ると思うが、じゃあこの苦悩は韓国に特有のものなのか、日本には存在しないものなのか、それとも世界中文化も民族も超えて存在するものなのか。そんなことを考えながら聴いてみる。というか、そんなことを考えないで聴くことは難しいようにさえ感じる。日々は淡々と過ぎていくし、その日々はほとんど変化のない毎日で、だから一度生まれた苦悩も劇的に消えるなどということもなくて、それをやりすごしたり耐えたりしながら、変化を請うもなかなか叶わず。最後に残る望みは眠ることだったり、近しいはずの人と話をすることだったり。どこでも同じなのかもな、こういう苦悩は。
韓国の音楽というと一頃の流行りとしてダンスをするイケメンだったり美少女だったりというポップミュージックを思い浮かべてしまうが、こういう音楽もしっかりと存在しているのを知ると嬉しくなる。この日本語字幕付きの動画はまだ5000回再生程度だけれど、字幕のないオリジナルの方は30000回再生を超えていて、人気ある人なんだなあと理解できる。
(2016.9.22)
(レビュアー:大島栄二)
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