2016年のmusipl.comでの6月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 Gotch
『Good New Times』
 ファウンティンズ・オブ・ウェインを思わせる詩的なサニーサイド・バブルガム・ポップ。同時に、エルヴィス・コステロ・アンド・ジ・アトラクションズのような影を忍ばせながら、モデスト・マウスの或る時期の息吹を継受し、いわゆる、アジカンのフロントマンこと後藤正文は、都市の中で花束を受け取り、市井の人たちに渡す。シリアスな様相が強まっていた時世でのこのバウンシーな路上文学的風情はうつくしい… (レビュアー:松浦 達
 

 
2位 DOTAMA
『音楽ワルキューレ2』
 あぁ、実はそこが問題だよねっていうザワザワするテーマを扱うDOTAMAのPV付きの曲『音楽ワルキューレ2』を見終わったら、本当に紹介したかった曲だけどPVなしの音だけアップロード『イオンモール』をレコメンドで出してくれ。頼むぞYouTubeのレコメンド機能。動画ありの音楽を紹介するページの、興味のその先をYouTubeレコメンドに託すハジメテの共同作業です…  (レビュアー:北沢東京)
 

 
3位 Adele
『Hello』
 歌姫というのはいつの世にもいて、日本の歌姫もいれば世界的な歌姫もいる。アデルは現時点で世界の歌姫と呼ばれる人で、まあ他にも何人かいるのだけれども、グラミー6部門受賞やレコードセールス、歌唱力などの点で、やはり現在最高の歌姫ということで間違いないのだろう。評価の決まっていないシンガーならばその歌のみで善し悪しを考える他無いが、ここまでの評価が固まっている人のことは… (レビュアー:松浦 達
 

 
4位 LILI LIMIT
『Festa』
 不思議なグルーヴだ。この不思議さがビデオの作りにあるのか、サウンドにあるのか、ボーカルの声のアクの強さにあるのか、おそらく、その全部だろう。無表情で動きの乏しい映像が異質な空気を生み出していて、そういうバンドなのかとついつい思ってしまうが、同曲のライブ映像を見るとけっして無表情で動きの乏しいパフォーマンスなどしているわけではなくて、そういうシーンを見ているとMVを見ている時に感じる…  (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 RADIOHEAD
『Daydreaming』
 小刻みのストリングス、難民への示唆を含んだ歌詞、リードの「Burn The Witch」、続けざまのポール・トーマス・アンダーソンのディレクティングの「Daydreaming」の不失観。そのまま、『A Moon Shaped Pool』というアルバムへのつながりの嫋やかさ。『The Bends』と『In Rainbows』の永い間を縫うようで、どの作品よりも柔和でダビーで、ミニマルでアンビエント且つ優美で、トムの内的心理も反映され… (レビュアー:松浦 達
 

 
6位 Desperation
『LOVE JET』
 今ほど誰でも音楽を発信することが容易な時代はかつて無かった。作ることも、届けることも。CDを作ることも全国に販売することだって個人ベースでできてしまう。だが、続けることは相変わらず難しいことだ。根性と情熱さえあれば続けることは誰にでもできる。だが、その根性と情熱が一番難しいのだろう。リスナーの側はというと、かつては作品を引っさげてステージに上がってきた段階でかなりの根性と… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 huenica
『街の案内人』
 アコースティックなサウンドに乗ったこの歌はどこかもの悲しい。それ以上に流される映像は悲しい。2009年に三軒茶屋から福島県富岡町に移転し、今はいわき市への避難を余儀なくされているNomadic RecordsからリリースされたhuenicaのフルアルバムからのPVは、その福島県双葉郡富岡町の写真がスライドで表示されていく構成になっている。人がいない街。柵が設けられた道路。あの日のままで更新されない新聞掛け… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 ラッキーオールドサン
『ゴーギャン』
 日本で解釈される“ヒッピーイズム”はどうにも型枠の中で解消されてしまったり、地域振興の一環で援用されてしまうところがあるが、こういう音楽がある場所でこれから鳴らされることが増えるだろうという意味文脈で、いつかのノマドロジーのような概念が聴き手や視聴者に問いかけるのではないだろうか。フジロック・フェスティバルでのフィールド・オブ・ヘヴンというステージで、ぐにゃぐにゃのサイケデリアで… (レビュアー:松浦 達
 

 
9位 ラブリーサマーちゃん
『私の好きなもの』
 数秒から数十秒でセルフィーや動画を配信することはもはや、当たり前な所作になって、それが如何に面白かどうか、編集感覚の妙まで敷居が高いかどうか、よりシェアできるかできないか、みたいなところで、自己表象の複製化が始まると、もうベンヤミンどころじゃないようで、あくまで自己は「自己」のプロデュース能力が巧さに依る。知りたいと思えば、どこかの第三者はどんどんディグする。そして、面白ければ… (レビュアー:松浦 達)
 

 
10位 ゆだち
『 (die staadt) Norm』
 このゆだちというバンドの曲はその中に歌が占める割合が相対的に少なくて、いや、少ないと言い方はおかしいのだが、歌の周りに奥行きを感じさせる、ある意味アンビエントな雰囲気を持った音がたゆたっていて、歌を聴いているというよりも音に包まれているという気持ちになる。このバンドのアコースティックでの演奏が別のアカウントの動画で公開されていて、こちらを見ると、やはりアコースティックだけ… (レビュアー:大島栄二)
 

 
次点 ウソツキ
『一生分のラブレター』
 いや、どんだけフラれとんねんこのおにいちゃん。でも根性は大事だね。歌詞の内容をちゃんと聞くとフラれてもフラれてもまた新しい告白をするということではなくて、今つき合っている相手に何度でも好きだと言おう、伝え続けようというようなものだとわかる。それは新しい相手を探してフラれつつも果敢にチャレンジすることよりも難しいことかもしれなくて、だからこの曲はありがちなラブソングとは一線を画していて… (レビュアー:大島栄二)
 

 
編集長コメント

1位 Gotch『Good New Times』:後藤さん本人のアカウントがリツイートなどで触れてくれたおかげで、多数のアクセスを集めました。松浦さんはこのビデオで「花を渡し伝えていく」ということが、今の時代に象徴的な希望のようなものを感じさせるのです、と話していました。音楽には時代を切り取りつつもそこに希望や夢を(そして時には絶望なども)付け加えていく力があるんだなあと再認識させられました。

2位 DOTAMA『音楽ワルキューレ2』:3月のレビューのこの曲が6月にもアクセス2位という快挙。地道にそして根気よく応援してくれるファンがいらっしゃるという証拠でしょう。そういうファンを味方に付けたアーチストはいろいろな意味で底力があるなあと思います。

3位 Adele『Hello』:こちらも古い、というか昨年末のレビューにアクセスが集まりました。アデルは世界的な人気者なので、どこからサイトに訪問してくれるのかもよくわかりませんけど、いずれにしても見てもらえているのは嬉しい限りです。曲もいいですし、また聴いてみるのもいいですね。

4位 LILI LIMIT『Festa』:6月の僕のレビューの中でも特に印象に残った曲が4位にランクイン。今回の上位3つがビッグネームだったり昔のレビューだったりで、実質的にこれが1位と言っても過言ではありません(いや、明らかに言い過ぎですけど)。この曲のアンダーグラウンドからポップ最前線へのアプローチ手法はとても興味深いし、彼らのしたたかさをじわじわ感じます。名曲だと思います。

8位 ラッキーオールドサン『ゴーギャン』:この曲のレビューをした松浦さんが最初にmusiplへレビューを寄せてくれたのがドレスコーズ『ゴッホ』だったことを思い出しました。いや、画家の名前の曲だというだけしか関連性はないんですけど、でも関知できない何か深いところで関連はあるのかもしれません。無いかもしれないですけど。そんなことを考えながら聴いてみるのも音楽の楽しみ方のひとつかもしれません。

 今回6位には3ヶ月連続ランクインのDesperationが入っていたり、また8位には1年半前に強烈な印象を残したhuenica『街の案内人』が再浮上したりと、どことなく過去を振り返るようなランキングになりました。レビューをしたときだけに盛上がるのではなく、過去のレビューがまた見られるというのは良いことだなあ有り難いことだなあと思います。一方で、レビューされたらそれを機に盛上がろうぜこれからのアーチストたち、とも思います。最新レビューのツイートをアーチスト自身が「イイね」だけしてリツイートしないとか、なんなんだろうかって思います。いやもちろんソレもアレもドレもコレも自由なんですけどね。

 7月に入るといよいよ夏本番。皆さん体調を崩されることの無いようお気をつけ下さい。もし体調を崩したら、涼しい部屋で静養しながら、日々のレビューをご覧いただけると幸いです。

(大島栄二)