スカート『CALL』
TV Girl『Taking What's Not Yours』
ゆだち
『 (die staadt) Norm』
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多くのバンド、いやリスナーにとってバンドサウンドというのは歌の伴奏のように理解されていることが多い。もちろんそういう要素は大きいし、実際に伴奏のバリエーションとしてしか考えていないバンドマンも少なくない。まず歌があって、それをアカペラで歌うのでは物足りなく、ギターなどで弾き語るだけでもやはり物足りなく、その物足りない何かを埋めるためにいろいろな楽器をいれて同時に鳴らして。だからそういうバンドのサウンドはなぜそこにベースがあるのか、なぜそこでリフを入れるのかということについての深い考察が省かれてしまっている。省かれているというより、考えることができないのだろう。しかしバンドサウンドというのはもちろんただの伴奏なのではなくて、サウンドを構成するひとつひとつの音がすべて表現なのであり、そこを理解して音楽を聴くのと理解せずに聴くのとでは、聴いている音楽は同じでも見えてくる光景はまるで違ったものになる。このゆだちというバンドの曲はその中に歌が占める割合が相対的に少なくて、いや、少ないと言い方はおかしいのだが、歌の周りに奥行きを感じさせる、ある意味アンビエントな雰囲気を持った音がたゆたっていて、歌を聴いているというよりも音に包まれているという気持ちになる。
このバンドのアコースティックでの演奏が別のアカウントの動画で公開されていて
、こちらを見ると、やはりアコースティックだけあって歌が中心にどんと鎮座している印象である。とはいってもボーカリストの独特な発声や声質から、ただ単に歌謡曲を歌っているようなものとは違っているし、楽器構成は違っていてもサウンドはサウンドとしてちゃんとその存在感と存在する意義を示してくれている。同じバンドでこういう対比ができる機会はそう多くなく、聴き較べてみて、ああ、面白いなと感じるとともに、サウンドっていったいなんだろうということをあらためて考えてみる契機になる。
(2016.5.31)
(レビュアー:大島栄二)
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