2015年のmusipl.comでの2月アクセス数上位10レビューはこちら!

 
1位 KANADe
『Happy & Sad』
 音楽を聴いている時のリッチな体験は、音楽の中にいる感覚だろう。ひとつはライブやフェスで外的視覚や振動で味わうもの。もうひとつは内的トリップ。最良の音楽が心を音楽の中へ連れ出す。環境もジャンルも関係ない。イントロがはじまった時に、ボリュームを3つも4つも上げたくなる。音楽の終わりにはどんな気持ちか、予測もできない。『Happy & Sad』はまさにその、内的な時空間旅行だ。街を歩く時もヘッドフォンを… (レビュアー:北沢東京)
 

 
2位 Blur
『Go Out』
 ブラーの12年振りの新しいオリジナル・スタジオ・アルバムが4月に出ると聞いて、即座にピンと来る人は、筆者に近い30代、40代だろうか。それとも、ゴリラズなどでデーモン・アルバーンを知った若い人たちの後追いの意識に依拠するのだろうか。以前だと、バンド・ヒストリーというのは重く、ひとつのナラティヴのようになり得たものだが、現今のようにコンセプトありきでプロジェクト的に同時多発的に… (レビュアー:松浦 達)
 

 
3位 秘密のミーニーズ
『ねずはうす』
 変わったバンド名をつけることでちょっとでも目立っちゃおう競争はこの数年顕著な傾向で、顕著ということはもはや変わったバンド名が普通というおかしな状況になってきてて、だからこのバンド名にももはや驚いたりはしない。でもオールドスタイルなバンド名とはやはり違っていて、そういう名前を付けたがる流行りのロックバンドなのだろうかと思っていたらまったく違っていた。ゆったりとしたテンポの演奏に… (レビュアー:大島栄二)
 

 
4位 カネコアヤノ
『家族について』
 自分が親に似ているなどとはただの1度も思ったことはない。だが、自分の子供を見ていると、自分とこの子は似ているなと、そしてこの子と自分の親が似ているなと思う。ということは自分と親も似ているのだ。でも、今に至っても似ているなとは思ったことがない。カネコアヤノが歌う家族の姿は嫌悪なのか愛なのかそれとも諦めなのか。似ていくということが自分の未来も規定しそうだという強迫観念はあって… (レビュアー:大島栄二)
 

 
5位 ケリーマフ
『イカサマ』
 コワい。いや、カッコいい。このシャウトの仕方が、本当にシャウトというか、吠えているというか、悪態をついているというか、かなり独特で耳からなかなか離れてくれそうもない。これだけ吠えまくりなのにしっかりと音楽になっていて、とても面白い。ロックバンドの人は楽譜なんて読めなくて当たり前とか、いやいや楽譜も読めなくて音楽が出来るかとか、もはやそんな論争など意味不明なくらいに… (レビュアー:大島栄二)
 

 
6位 ポニーテールスクライム
『オリオン』
 比較的都会に生まれ育ってしまったせいか、星空というものにほとんど知識がない。そんな僕もかろうじてオリオン座だけは知っているのだから、その形と明るさと知名度は突出しているのだろう。曲に使われるキーワードはよほど個人的数人だけに伝わればいいというものでもなく、だから星座を軸にしたストーリーを考える上でよほど特殊な事情がなければ、オリオンという単語は万人に通じる星座だといえるだろう… (レビュアー:大島栄二)
 

 
7位 ココニカカル
『生きてる』
 エモーショナルと言えばいいのか、それともそれは違っているのか。近年はジャンル分けも微に入り細に入り、結局どんな音楽がそのジャンルを指すのかはよくわからないことになってしまっていると思う。なのでこれがエモかどうかは本当に判らないのだけれど、感情がとても込められている曲であり歌だということは間違いないだろう。ただ、このボーカルの籠るような声の出し方歌唱法は、曲の中で静寂と絶叫のメリハリを… (レビュアー:大島栄二)
 

 
8位 The Jon Spencer Blues Explosion
『Do The Get Down』
 わたしはもうショックを受けたくない。忘れられているかもしれないが、第一回のサマーソニックのヘッドライナーはジョンスペだった。時間が押しまくり、トリなのに40分ほどで終わった。ショックだった。わたしは当時流行っていたポストペット(メカ)に「ジョンスペちゃん」と名づけた。意外とあっけなく天国へ旅立った。ショックだった。そして徐々に日本での(世界的にかもしれない)彼らの存在感は薄れていく… (レビュアー:夜鍋太郎)
 

 
9位 Crystal Fighters
『Love Natural』
 サッカーゲームはウイイレ派とFIFA派で二分される。わたしは数年前から後者に転向した。操作性やチームや選手データの妥当性などはもちろんだけれど、ゲーム内で流れる音楽も重要なポイントだ。その点は洋楽好きからすると、FIFAに軍配が上がる。そしてFIFA14のプレイ中に、曲が好きすぎてサッカーの試合どころでなくなり、CDまで購入したのがCrystalFightersの「Love Natural」だ。スペイン出身、ロンドン在住の… (レビュアー:夜鍋太郎)
 

 
10位 Julian Casablancas+The Voidz
『Where No Eagles Fly』
 2014年度わが心のベスト変態ソングは何か。本当にこのようなカテゴリーがあるかどうかはともかく、真剣に考えてみると、Arcaは有力、Ariel Pinkもなかなかで、国内ではくるりの「Liberty & Gravity」もやばかった、と候補はいくつか挙げられる。中でもJulian Casablancas + The Voidzの「Where No Eagles Fly」を一番に推したい。ダサいのにかっこいい、最低なのに最高、引用だらけなのにシンプル、と思える… (レビュアー:夜鍋太郎)
 

 
次点 Massan × Bashiry
『春夏冬』
 ボーカルラッパーのマッサン、ギターのヴァシリーの二人組。ちょっとなに唄ってるかわかんないんだけど、分かる、これこそがグルーヴ! 思考でなく、今ここで湧き出している様なフロウ。2014年のTHE MANZAIで優勝した博多華丸大吉が「本当に面白い人たちは劇場にいます」っていうコメントを残し、芸人たちからも「さすが大吉さん」と尊敬されていた。劇場には電波にはのせられない面白さもあるし、牧場には… (レビュアー:北沢東京)
 

 
編集長コメント

1位 KANADe『Happy & Sad』:1月に引き続き、北沢東京さん紹介のバンドユニットが1位にランクイン。と思ったらボーカルの本田さんはMUSIC SHAREという音楽番組をやってる人で、ほんのちょっとだけ知人でした。いやあ世界は狭い。知人だったらお前が紹介しろよという声も聞こえてきそうですが、知人だから紹介するというサイトではありません、念の為。北沢東京さんのアンテナにビシッとはまって、それでレビューということです。そういうのがアクセスを集めたということでしょう。

2位 Blur『Go Out』:12年ぶりにアルバムをリリースするというBlurの松浦さんによるレビューが2位にランクイン。しかしこれ、アジアンキッチンでデザートを作るという不思議なビデオ。僕は年代的にそんなにBlurを聴いてないのですけど、こういうテイストなんですかね彼ら。こういうビデオで良いのなら若手バンドもそんなに凝ったビデオ作るのに一生懸命になったりしなくていいんじゃないかと思うのですが、大物だからこそ許される、そんな動画なのだろうと思います。若手は懸命にビデオ作ってください。

3位 秘密のミーニーズ『ねずはうす』:時代もムーブメントも流行もなにもかもに囚われることなく、好きな音楽をひたすら追究しているという感のある彼ら。自由な感じがすごく伝わってきます。こういう自由な雰囲気を持った音楽は、聴いていても単純に心地良いですね。

4位 カネコアヤノ『家族について』:美少女は軒並みアイドルグループに足を突っ込んで歌って踊ってってやってるご時世ですし、そうじゃなければ昔からバンドマンたちにスカウトされて紅一点のボーカルとして華になったりしてきたわけですが、こうして硬派な歌をガツンと歌ってるというカネコアヤノはとても気になります。レビューでも触れましたが、弾き語りにこのエレアコの音がとても違和感があって、楽器選びを誰かに相談していたらきっと選んでいないのがこれ。なのにそれを手に入れてたいしたエフェクターも使っていないような音で鳴らして歌ってる姿に、僕は自由を感じます。とてもイイと思います。

5位 ケリーマフ『イカサマ』:昨年7月に公開したレビューがもう何ヶ月連続なのでしょうか、アクセスランクにランクインし続けています。息が長いです。4月にはツアーも決まっている彼ら、東京以外の人たちも生で見るチャンスがようやく訪れようとしています。

 先月からレビュアーとして参加してもらってる夜鍋さんのレビューが8、9、10位にランクイン。しかも比較的変化球的なレビューばかりがランクインしていて興味深いです。基本は直球勝負のレビュー文賞を書いていただいているのですが、どういうわけか変化球的なものが上位に。リスナーはちょっと変わったのを求めているのでしょうか? でも、直球のレビューもご覧くださいね。というか、毎日アクセスして、動画とともにレビューをお楽しみいただければ幸いです。

(大島栄二)