編集長 大島インタビュー、第2弾!

『音楽シーンの今と、musiplのこれから』

 

必要なのは、時代に合った新しいキュレーション機能

大:でも、音楽シーンに活気がないのは確かだし、現状にはいろいろ問題があるとは思っています。

M子:問題と言うと?

大:まずは、すでに話に出たショップの苦しい状況。音楽の裾野が広がり、リスナーの選択肢が広がったことにショップがついていけないのは、品揃えの問題があるから。ショップの店頭に置ける在庫数は、たとえばタワレコ渋谷で約20万枚。最近は見なくなったけど、10年前くらいまでよくデパートに入っていたような規模のCDショップで約1万5000枚。
 25年前、僕がビクターで営業をやっていたとき、一部の大型店以外の普通のショップでは、そこそこ有名なアーチストのCDでも新譜以外のタイトルが全部揃っていることは稀だった。当時メジャーでは年間200組の新人が出ると言われていたけれど、それらを全部並べることさえ難しかったんだよ。

M子:うーん、たしかに中高生の頃から、欲しいCDは店頭になくて取り寄せしてもらうことが多かったかも……。

大:今やインディーズも含めて全タイトルを置くなんてことは、20万枚のタワレコ渋谷でもまず無理。そうなってくると「これが欲しい」と思ってショップに行っても、置いてないことがほとんど。

M子:ないものは取り寄せで対応するしかないんですね。でも今のリスナーなら、取り寄せするくらいならネットで買いますよね。

大:取り寄せは面倒な上、時間も、お店に行く交通費もかかるからね。しかも最近では、インディーズのCDをショップで取り寄せて買おうとすると、店員に知識がなかったり、手続きに慣れてなかったりして、ちゃんと流通してる商品なのに「取り寄せられません」って言われることもあるらしい。
 その点amazonなら、店員と問答しなくても、検索するだけですぐに出てきて、クリックすれば数日のうちに家に届く。送料も無料。これに慣れたら、ショップには行かなくなるよね。インディーズで多くのアーチストがCDを出せるということは、アーチスト、リスナーの双方にとって大きな福音になったけど、ショップのダメージは大きかったよね。

M子:良いショップがなくなることは、結局はリスナーにとっても痛手ですしね。ほかには、どんな問題があると感じていますか?

大:じゃあ次は、リスナーに直接関係する問題について話そう。音楽の選択肢が広がったことは、ある一定の状況まではリスナーにとってメリットの方が大きかったと思う。でもそれも最近は度が過ぎてきて、選択肢が多すぎてかえって選びにくいという状況になってしまった。選ぶのが難しいから、多くの人が良い音楽にも出会えていないのが残念なところ。だからこそ、キュレーションする(情報を選び、新しい価値を持たせ、他の人と共有する)という機能が必要になっていると思うんですよ。

M子:もともとは、オリコンのチャートや音楽番組、それにショップの店長がキュレーター的な役割を果たしていたわけですよね。それらが機能しなくなった今は、どんなものが求められているんでしょうか?

大:オリコンチャートのようにメジャー一辺倒ではなく、インディーズを含めた幅広い選択肢を対象にしたもの。さらに言えば、売り上げや数字で選別するのではなく、人の感性、専門家の耳ですくい上げて紹介するという方法が今の時代に合っていると考えています。

M子:つまりmusiplがやっていることですね!

musiplは、『イカ天』の現代版?

 

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