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サマーソニック2016の歩き方

  〜夢と魔法の国編〜 文=夜鍋太郎

【サマソニ2日目!】

 サマーソニック2日目(8月21日)は前述した通り、Radioheadが最大の目的ではあるのだけれど、もちろん、それ以外にも見どころ満載だ。

 今年復活して、ただいま全国ツアー中のThe Yellow Monkeyもこの機会に見たい方も多いだろう。吉井和哉はかつて、Radioheadのライナーノーツで「いつか対バンしましょうよ!(同じ条件で。負けねぇよ)」と書いたことがあった。それが解散を経て、このタイミングで叶うとは! 私は復活したばかりの5月の時点でライブに行ったのだが、久々とは思えないバンドサウンド、風格あるたたずまいを見せてくれた。その後、ツアーでライブを重ねて、今や、いわば「仕上がった」状態なはず。何しろドームライブを経験した彼らだから、マリンスタジアムを盛り上げるのもお手の物。かつてのファンでなくても、一見の価値がある。

 

The Yellow Monkey「Alright」

 

 というわけで、「アンセムを聴く」というテーマに沿って、2日目はアーティストごとに、特に聴きたい曲に注目しながら話を進めていきたい。

【まずは昨年のマイベストソングを!】

 深夜のイベントまでたっぷり楽しみ、疲れていること必至なので、2日目は昼からの始動じゃないと無理だろうな、と心している。だが、せめてMØ(ムー)のライブには間に合わせたい。本当は午前中からソニックステージで、Sunflower Bean、POP ETCと続けて見たいところだが、そうなると一日乗り切る自信がない。ここは涙を飲んで諦めるしかないのか……。元気なみなさんは、おすすめなので、この辺のアーティストも是非ご覧になっていただきたい。

 昨年のベストソングは、Major Lazerの「Lean On」だったと(未だ暫定的に)思っているのだが、そのボーカルがMØだ。昨年末、Major Lazerのライブでも聴くことができたものの、ここは生歌で聴くチャンスだ。この曲もまた、近年を代表するクラブアンセムと言っていいはず。アンニュイかつ伸びのある歌声を聴きながら、2日目も最初からテンションをあげて踊りたい。

 

MØ「Lean On」

 

【懐かしのキツネブランド】

 以前、Kituneというフランスのレーベルから出ているアーティストがやたらと推されていた時期があって、私はその辺を漁っていたのだけれど、そこにTwo Door Cinema Clubもいた(今は違うレーベルらしい)。だから彼らの曲にはなじみがあるし、この洗練されたエレクトロポップなバンドサウンドは、一発で好きになってしまう魅力にあふれている。

 3年ぶり4回目の出場(高校野球みたい!)だが、マリンステージは初となる。彼らのライブは未見なので、どんな感じなのか私には想像がつかない。今、久しぶりに音源を聴き直してみたら、やばい、テンション上がってきた。改めていい曲が多いことに気づく(特に1stがすばらしい!)。「Undercover Martyn」、むちゃくちゃいい。是非、これを機に生で見てみたい。ほかにも、きっとライブ映えする曲ばかりだろう。ただ、昼のスタジアムで、体力だけが心配だ。ディズニーランドで炎天下、しかも昼食後にアリスのティーパーティー(カップがぐるぐる回るやつ)に乗って、めちゃめちゃ具合悪くなる、みたいな悲しい事態が起こらないように、気をつけながら楽しみたい。

 

Two Door Cinema club「Undercover Martyn」

 

【偽栗原類の熱唱】

 James Bayにも期待している。最初にPVを見たとき、こぎれいな栗原類だ、と思った。やはり誰もが相似性を感じたのか、国内用のプロモーションに栗原類を起用したほどだ。ともかく、長いストレートヘアーと黒いハット。スタイリッシュな恰好でギターを抱える姿がむちゃくちゃさまになっている。その外見に目を奪われてしまうが、前提として、ちゃんと曲がいい。デビュー間もないながら、彼には「Hold Back The River」というキラーチューンがある。そのご尊顔と歌声、しっかり堪能したい。ただ、この日、もしも栗原類が会場を歩いていたとしたら、あ、ジェームスベイだ、と本気で間違う自信もある。チップを見て、あ、デールちゃんだ、と真顔で言った母の血を私は引いているのだから。

 

James Bay「Hold Back The River」

 

【ファンクでいこう!】

 待っていたぞ、Mark Ronson。ということで、何はなくとも、「Uptown Funk」を聴きたい。これはディスコ・ファンクブームの決定版、とも言える大ヒットとなった。去年のうちに聴きたかったなあ、と言っても仕方のないことだが、ついに生で体験できる(ちなみに昨年、The Soul RebelsがビーチステージでUptown Funkのカヴァーを披露してくれて、最高に楽しかった!)。これでBruno Marsもいればなあ、と思い始めると、いよいよ趣旨も変わってくるが、さまざまなカヴァー曲を織り交ぜて、盛り上がるセットリストになるはず。ただ残念なことに、Mark Ronsonのライブを最後まで見ると、Radioheadが頭から見られないようだ。しかし、途中で抜けて、「Uptown Funk」を聴けないのも困る。私は今、タイムテーブルをにらみながら、もんもんとしている。きっと明日も、明後日も、もんもんとしている。

 

Mark Ronson「Uptown Funk」

 

【ゴミか蛆虫か】

Suedeのアンセムと言えば、日本では「Trash」になるのではないだろうか(異論はもちろんあるだろう)。やはり最高にかっこいい。イントロが始まった瞬間から、その世界に耽溺してしまう。彼らの曲はそんな気持ちよさが持続するものが多い。ライブでは曲を聴いているだけで、こちらも熱唱しているような気分で、多幸感と共に、ぐいぐい彼らの世界にはまりこんでいく。

 Radioheadが「僕はキモい奴」と「Creep」歌いあげるなら、彼らは「Trash」で「僕らはゴミ」と歌う。ある意味で、これは2大自虐アンセムではないだろうか。できれば、この2曲を続けて見られるタイムテーブルだったらよかったのだが、なんと、丸かぶり! Suedeのあと、急いでかけつければ、少しはRadioheadを見ることはできるだろうが、果たしてその選択が正解なのか、これもまた迷うところだ。いずれにしても今年最大の注目でもあるRadioheadではなく、こちらを選んだ熱心なファンたちの思いが一つになった、最高のライブが見られるはずだ。

 いずれにしても、「Trash」から「Creep」の流れ、見たかったのにな……と私は当日のぎりぎりまで、それこそキモいほど、うじうじしていることは間違いないだろう。

 

Suede「Trash」

 

【おまけ -サイレントディスコ-】

 番外編として、サマソニの密かなる(?)お楽しみをご紹介したい。サイレントディスコである。これはまさに、サイレントなディスコ、だ。未だ何一つ説明していない感こそあるが、各自がヘッドフォンを装着して、DJが鳴らす音で踊る、という趣旨のものだ。はたから見ると、異様な光景なのが非常に楽しい。みんな、音がないのに踊っている。同じタイミングで手を挙げている。あやしい。しかし実際に試してみると、余計な邪魔が入らず、音だけに集中できるのに周りの人との一体感もあって、これはやたらと盛り上がる。また、それこそアンセム級の曲もたくさんかかるので、どなたでも楽しめるはず。昨年はガーデンステージの近くにブースがあったのだが、今年はメッセ内に移動するらしい。空いた時間があるなら、是非、試してほしい。結果、どっぷりはまってしまって、生のライブを全然見られなかった! ということになるかもしれないが、それはそれで、後々、いい思い出になるのではないだろうか。ディズニーランドで何を思ったか、トゥーンタウンのチップとデールのツリーハウスで延々遊んでいた私と、どうか同じ思いをされるがいい!!

【終わりに】

 わけのわからないディズニー例えを書いてみたり、まるで例えを思いつかずに触れない箇所もあったり、プーとデール好きを醸し出してみたり、この記事を読まれたみなさんにも、もちろんディズニーファンの方にも謝罪したい気持ちでいっぱいであるが、さらに言うなれば、私はここ数年、いや、下手したら十年近く、ディズニーランドに訪れていない。そんな身でありながら、何がチュロスだ、何が、ハニーハントだ、と猛省している。当日は京葉線で海浜幕張に向かいながら、途中の舞浜駅で降りないように、いや、魂の一部だけは舞浜界隈に残しつつも、サマーソニックという夢と音楽の王国で魔法にかけられたような時間を過ごしたい。みなさんも、当日はどうか体調だけには気をつけて、めいっぱい楽しまれることを願いつつ、これにて了。長い文章に最後までお付き合いいただき、心から感謝したい。


 
 

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