ヒラセドユウキは平成の坂本龍一である

ヒラセドユウキライブレポート   文=大島栄二

 ヒラセドユウキのツアー『monochrome』を観に、京都の会場である元立誠小学校に足を運ぶ。ヒラセドユウキについてはmusipl.comでも昨年秋にレビュアーの松浦氏によって紹介されている。以来応援メッセージやインタビュー記事なども掲載され、このサイトでは比較的お馴染みのアーチストといえよう。彼の音楽をどう評するのがいいのか。今回ライブを観に行った僕の、主目的はそれを見極めることだった。

 ピアノを弾くインストミュージック。端的に言えばそれなのだが、その言葉には何の面白みもない。形式を定義することと音楽の面白みを伝えることとは基本的に異なる作業だ。ヒラセドユウキの音楽とはいったい何なのか。そして、聴く価値は有るのか無いのか。あるとすれば、どこにあるのか。

 松浦氏による最初のレビューでは「ポストクラシカル」「ミニマル・ミュージック」という単語が使われている。ある種の時代背景を踏まえた上で「実存の再確認として過剰装飾をなくしたこの音楽」とも表現されている。そこで紹介されていた動画は確かにシンプルで無駄の無いサウンドであった。

 

ヒラセドユウキ『behind the scenes』MV

 

 だが、そのレビューのほぼ1ヶ月後に公開されたインタビューで、ヒラセドユウキ自身は「自分の作る曲をすべてロックだと思っている」と語った。ポストクラシカルとかポストミニマリズムという形容とは裏腹の、ロックという言葉で自分の音楽を語っている。ユニークだ。とてもユニークだ。そして、とてもイイと思う。

 実のところ音楽業界人としてそのほとんどのキャリアをロック畑に置いている僕にとっても、「ロックとは何か」というのは未だに謎である。同時にクラシカルな音楽については素人同然だと自覚している。ただ、ロックというのが単に音楽ジャンルを指している言葉ではなく、その枠を越えている何かだということは理解しているつもりで、そういう視点からみたとき、現在のいわゆるロックシーンというものはなにかつまらないと感じてしまう。仕事で日々これでもかというくらい見知らぬ無名ミュージシャンたちの音楽を聴くのだが、今のロックバンドには物足りなさがあるのだ。例えば、最近は誰もが「フェスに出たい」と口にする。でも待ってくれ。それって歌謡界の人たちが「紅白に出たい」と言っているのとどう違うのだ。やっている音楽そのものを見ても、リズムもテンポも比較的似ていて、歌う内容も似たものが多い。ロックを形式として認識しているだけのバンドが山のようにいる。どんな芸術も最初は形式の模倣から入っていって当たり前だしそれでいいのだが、やっているうちに自分らしさを出していかなければいけない。だが自分らしさよりも誰からしさの方が様になるのか、楽なのか。いつまでもどこかで聴いたような風情から抜け出せず、しかもそれを自分らしさだと錯覚してしまっている。そんなミュージシャンは実に多い。

 ヒラセドユウキはまったく違う。ロックを志してこの音楽に行き着く。ユニークだ。そして行き着いた音楽を方程式のように「ポストクラシカル」と評されると違和感を覚える。自ら異端の道を選び、自分であろうとする。


m:ヒラセドさんの音楽を届けたい相手というのはどういう人なんでしょうか?

ヒラセド:僕の音楽を聴いた人は「クラシックから派生したポストクラシカル」という印象が強いんでしょうけれども、僕の狙いはちょっと違ってて、むしろポストロックの延長線上にあるこういう編成。持っている音楽の背景や考え方というのはむしろロックから派生したもので、たまたまチェロとピアノという形をとっているということなんですけれども、曲を聴いただけではなかなか伝わらないのかもしれませんね。

m:僕はクラシックにはあまり詳しくないのですが、そんな僕が聴いて感じたのは、これは坂本龍一なんじゃないかなと。ただのクラシカルなサウンドというのではなくて、歌は無いのに歌があるようなメロディを感じて。今回のヒラセドさんのアルバムではその部分をチェロが担当しているような印象ですが、全体的には映画音楽を聴いているような気がして。だからロック系の僕にもすごく響く。

ヒラセド:それは嬉しいですね。旋律の部分はとても大事にしています。

m:ピアノの部分もチェロの部分もヒラセドさんが作っているんですか?

ヒラセド:はい。全部書き譜しています。メロを弾かせたら弦楽器が一番じゃないかという気がしているので、チェロを配したりしています。

m:ヒラセドさんはピアニストやプレイヤーというよりも全体的にはコンポーザーとしての意識が強いということでしょうか。

ヒラセド:そうですね。僕自身は必要性に駆られてピアノを弾きはじめたんですね。根本にあるのは作曲です。



ヒラセドユウキから連想した坂本龍一のポップネス

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ヒラセドユウキ『monochrome』release tour
ヒラセドユウキ(piano)×徳澤青弦(cello)
2015年2月14日(土)東京 三軒茶屋・四軒茶屋 13:00open/13:30start(終了)
2015年2月27日(金)京都 元立誠小学校 18:30open/19:00start(終了)
2015年2月28日(土)神戸 塩屋・旧グッゲンハイム邸 19:00open/19:30start(終了)
2015年3月21日(土)名古屋 parlwr 18:30open/19:00start
2015年4月25日(土)札幌 music hall cafe 18:30open/19:00start
2015年5月6日(水/祝)東京 光が丘美術館 詳細未定(昼公演)

  主催:dandanorchestra
  各公演ご予約:dandanorchestra@gmail.com 迄、メールにてお申込みください。
         dandanohchestraからの返信を持って予約完了となります。