めっちゃ好き。アンニュイとかスタイリッシュとかいう言葉が全部陳腐になるほどにすべてが完成している気分。20年ほど前に原田知世がトーレヨハンソンをプロデューサーに迎えてスウェディッシュポップに傾倒していった結果生まれたアルバム『I could be free』にあったような世界観が蘇ったかのような感触がある。こういう音楽は多くの人が憧れるのか、ここを狙ったかのようなミュージシャンも多く、そこそこの出来映えは見せてくれるし聴けばほっこりもする。満足といえば満足することは少なくないのだが、このanzuさんの曲を聴いてしまうと、これまで満足してきた曲の数々は一体なんだったんだろうかと思う。やっぱりそれは「もどき」だったのかもしれない。憧れとテクニックだけでは超えられない一線というものがあって、その手前まで行くだけで十分といえば十分なのだが、やはりその一線を超える音楽やセンスというものはあって、この曲はその一線を超えた、ひとつの完成形だといえる。断言するよオレ。
そんな究極な音楽を聴きながらMVを眺めていると、これはこれでなんかすごいなと思っちゃう。舞台はカフェだ。そこでanzuさんと思われる女性がカウンターでコーヒーをドリップする。できたコーヒーを、anzuさん自身がカウンターで飲む。飲みながら本を読む。読むのに疲れたらミニチュアを並べながら、街の様子を妄想する。えええ、カフェ営業してないのって思う。多分、多分だ、ここはカフェなんかじゃなくて、カフェのような自宅なのではないだろうか。自宅と違ってカフェは落ち着く。でも他のお客さんがきておしゃべりなんて始めるともう落ち着けなくなる。いっそ他のお客さんなんて来ないカフェがあれば良いのになんて思うことはよくある。じゃあ家に帰って本読めばいいじゃんといわれるかもだが、家ではダメなんだよカフェじゃなくっちゃ。だからカフェっぽい自宅を作る。そこに日常は持ち込まず、あくまでカフェ。インテリアだけカフェなんじゃなくて、道路に面してていつお客さんが入ってきてもおかしくないようなシチュエーションでなければ。そんな妄想上の理想のカフェが、MVの中で実現していた。素晴らしい。見ているだけで落ち着くし癒される。その上にanzuさんの曲だ、歌だ。このMV、まだあんまり視聴されてないけど、だからこそ見て欲しいし聴いて欲しい、完成された音楽だと思う。