見つめてるように、見下しているように、から、音を重ねての20年。そのころの、君は変わり、『ALL THE LIGHT』が孕むカラフルで感極まる要素とは一体、なんなのだろう。彼らの作品の中でも異端といえなくなく、つまり、とても彼らだからメタだろうがベタだろうが、「わかる」みたいなポイントもあれども、余計な理屈や根拠なく聴ける本当に良いアルバムだと思う。
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『ALL THE LIGHT』。10曲、42分ほど、あっという間に聴けるが、何度も聴き直したくなるほどに1曲の魅せる光彩が違う。田中和将作詞作曲のアカペラの、コーラスを重ねた冒頭の「開花」から、先行で公開されていたホーンの印象的な明朗な「Alright」へのなだれ込む感じがとても心地よく、GRAPEVINEの新作を聴いているというより、ストーンズの『女たち』を聴いているような、ビートルズの『リボルバー』を聴いているようなタイム・リープをしながら、ふと、昨今のMGMTなようなアート・センスの音像化に反応もして、優しくたおやかな曲に涙が緩む。数多くのインタビューや取材で田中はこの作品や全曲について語っているので参考にしてほしいが、GRAPEVINEが「光をうたう」という何かはどこか閉ざされて、反面、闇深い瀬の反動でもあるのだと思う。