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鈴木実貴子ズ
『アホはくりかえす』

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 最近流行りのあるあるソングかと思った、最初は。バンドマンがこんなことをよくやるよねと、ほら、ちょっと前にYouTubeでもめちゃ再生されたミュージックビデオあるあるみたいな感じの。あれが注目されたおかげでそういうバンドマンあるあるソングが次々と作られて、ミュージックビデオあるあるの続編があったなら、あるあるソングを作るよね的なフレーズが入ってくるのは確実。でも鈴木実貴子ズがそんなあるあるソングを安易に作るんだろうかという疑問も最初からあって。集中して聴いていたらやっぱり違う。突然ライブハウスがキャバクラに変わったということを歌う。日本経済とか音楽シーンとかを考えたらそれも一種のあるあるではあるけれど、この曲ではライブハウスがキャバクラに変わったという描写がこれでもかと繰り返される。そこにある絶望感、虚無感。信じていたものが簡単に別のものに置き換えられることの虚しさ。そういったことを鈴木実貴子の独特な信念のシャウトが描いていく。その結末として、あるべきものがあるだけ、成るべきものに成るだけ、ということが語られていく。リスナーへの語りかけというより、むしろ自分自身へ言い聞かせるような、修行僧がみずからの苦行を納得するために経を無心に唱えるような。映像は楽しげな飲み会から、仲間が去っていってひとり酔いつぶれる光景。成るべきものに成り、あるべきものとしてあるというのは辛くて切ないよなというのが画面から溢れてくる。それでも、自分には成るべきものの姿があって、やるべきことをやるしかないのだと。曲の冒頭で語られていた、何かを繰り返しているアホと、種類は違うのだけれど、やるべきことをやるだけの「自分」も結局はくりかえしているアホでしかないのかもしれない。ただひとつ、信念を持たないアホなのか、信念を持ったアホなのかという違いがあるだけで。その違いも、きっと他者から見ればたいした違いではないのかもしれないが、アホはアホなりに小さな違いにこだわって、やることをやり続けるしか生きる道は無いのだと、彼女の絶叫が伝えようとしている。
(2019.2.28) (レビュアー:大島栄二)
 


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