山本達彦『夜のピアノ』
照沼サラ『エンドロール』
ベントラーカオル
『むきだし』
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なんだこのなよっとした感じのおにーちゃんの力が抜けた歌は。でもただのなよっとした力の抜けた歌じゃないよな、だって耳につくもの。明らかにアブノーマル。ただ者ではない。と思っていたら
クウチュウ戦(現在はKoochewsen)
のメンバーでした(クウチュウ戦を知らない人は
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)。2014年に
『予言』
をレビューした時に「この人たちは頭がオカシイ」と断じていたけれど、もちろん頭がオカシイは褒め言葉で、誰かのマネをしてるだけの自称アーチストが多い中、おかしな頭で発想されたクリエイティブな楽曲を聴かせてくれるクウチュウ戦の、そのキーボーディストがこういうバンドとはまた違った音楽をやっているとは知らなかった。良いですねこれ。表舞台でトリッキーなことをしている人の内面の心象風景を覗いてしまったような、罪悪感にも似た心持ちになります。ただし、この曲にある綺麗で静かな、ある種上品な音楽世界がベントラーカオルの世界だと思ったら大間違いで、アルバムを通して聴けばこの「むきだし」とはまったく違うテイストの曲が無秩序に並んでいて、本当にバラエティというか、ごった煮というか、見さかいなさに溢れています。この曲の綺麗さだけを求めて聴いた人は「騙された〜」と思うかもしれないけれど、クウチュウ戦的なところから彼のアルバムに向かった人は「なるほど〜」と膝を打つでしょう。バンドは誰かひとりのクリエイティビティとリーダーシップに引っ張られて凡なるミュージシャンが一緒に活動しているということが多いですけど、彼の様に特殊な才能を持ったミュージシャンが何人も関わっているバンドが頭オカシイ楽曲を世界を構成しているというのは素晴らしいことだし、その一端を覗いたという気分になれるというだけでも、この曲は必聴なんじゃないかなあと思います、2010年代後半の音楽シーンを語る上では。
(2018.5.21)
(レビュアー:大島栄二)
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