80年代にいくつかのヒットを飛ばした山本達彦。コーセー化粧品のタイアップに起用され、当時母が化粧品店を経営していた関係で家に山本達彦の曲が数曲入ったプロモーションカセットがあった。音楽ソフトが高かった当時、聴けるものはなんでも聴いていて、そのカセットも飽きること無く何度も再生された。そういうと本当に聴くものがなかったんだな昔はと思われるかもしれないが、実際はそうではなくてレンタルレコード屋もアナログレコードだが一応あったし、300円ほど払えば借りてきてカセットにダビングして聴けば良かった。借りてきたレコードはすべてダビングしたけれど、気に入らないカセットは当然聴かないし、別のレコードを借りてきてはそれをダビングするために消去した。プロモーション用のカセットは最初から爪が折られていたけれど、セロテープを貼れば上書き録音することができる。それでも消去せずに何度も聴いたのは、山本達彦の曲がとても良かったからだ。80年代初頭に、テレビに出てくる歌謡界の人たちと、絶対にテレビには出ないアーチストアーチストした人たちと。山本達彦はその中間に位置していた。特別にアーチストっぽさを強調することもなく、かといって芸能界的な雰囲気もなく。もちろん今と違って芸能活動をしている以上芸能界から完全に逃れることは不可能なのだが、それでも、当時の芸能事情から現在の様相に変化する過程で、その立ち位置を微妙なバランスで開拓した人たちがいたわけで、私見に過ぎないが、山本達彦はそういう中のひとりだったように思う。繰り返し聴いたカセットに含まれていた曲は『TWO WAY SUMMER』と『突風〜SUDDEN WIND〜』で、それはYouTubeでは見当たらなかった。僕の手元にもカセットそのものは既に無い。それでもSpotifyやiTunesで聴けたりするのだから便利な時代だ。ここでは比較的その曲に近いテイストのこの曲を。