尾崎豊『僕が僕であるために』 Next Plus SongJohn Mayer『Still Feel Like Your Man』

ハンバート ハンバート
『ぼくのお日さま』

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 言葉がうまく言えない。その気持ちは一体どういうものなんだろうかと他人事のように想い巡らせていたのだけれど、よく考えてみたら自分だってそんなに言葉がうまく言える人ではなかった。多分、みんなそう。誰だって。大事なことを言おうとすればするほどその難しさに直面して打ちひしがれるばかりの人生だ。動悸がする。心臓がばくばくいう。おいおい心臓よ少し静かにしておいてくれないか。もうちょっと静かにしてくれていたなら、もうちょっと人生も楽になるのに。

   こみあげる気持ちで
   ぼくの胸はもうつぶれそう
   泣きたきゃ泣けばいいさ
   そう歌がぼくに言う

 今になって思えば、ちょっとだけ状況が違っていただけで僕とそんなに変わることのない友が本当に胸をつぶして心臓を静かにさせてしまって。じゃあ僕とそいつの決定的な違いはなんだったのかというと、家に帰ってもロックが待ってくれていたかどうか、だけだったような気がする。歌に代わりに大事なことを言わせて溜飲を下げる。僕だけじゃないよな、ミックが、レノンが、清志郎がそう言ってるものな。そんなちょっとのことで、僕がどれだけ救われてきたのか。今の今まで気付きさえしなかったのだけれども、こうして生き残って駄文を書いたりできるのは、考えてみればずいぶんラッキーなことなのだ。音楽よありがとう。もうあまり儲かりもしない産業になったけれど、それでも簡単に手放せないのは、それでもなお音楽が人間にとって大切なものだからだ。
 ハンバートハンバートの歌は、しみじみとじんわりと、大切なことを歌ってくれる。人のコミュニケーションの難しさ、大切さ。夫婦で歌っている彼らの、だからこそその距離感にもあるだろう「すれ違い」や「緊張感」は、とても切なく、同時に優しい。こういう切なさや優しさを心に蓄積していくことが、いざという時の心のショックアブソーバーを作っていくのではないだろうか。
(2017.4.16) (レビュアー:大島栄二)
 


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