ユメノハウス『Se-nd』 Next Plus SongEnter Shikari『Redshift』

ユタ州
『27さい』

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 昔通った学校に再び訪れてみるとあまりのステキ校舎に変貌してて驚くことがある。こんなところで泥臭い悩みを抱えることは出来るのか、体育館の裏に来いって不良先輩に呼び出されても、誰の目も届かない場所でボコボコにされるという恐怖に恐れおののくことも出来ないのではないかと、心配になる。ライブハウスも同じで、どういうわけだか建築技術が発達したのか、それともステキテナントにしないと入居してもらえないからと施主がステキビルを作ってしまうのか、天井は高いしオシャレな照明が客席の隅々にまで行き届いて、ああ、好青年の音楽が展開されるんだなあと凹んでしまうこともある。名古屋のElectric Lady Landなど今でこそステキ空間になっているけれども、その昔は狭い会場で、でもパンク的なバンドがたくさん出てて、拳を振り上げたり縦ノリでジャンプしたりしてノッていたのに天井は低く、おまけにステージ前にかなり大きな梁があって、ジャンプしたらステージ見えないじゃんという感じだったのだが、そこで多くのロックキッズはジャンプしまくってたものだ。このビデオの3分半あたりで客席からステージを写した瞬間、そんな記憶が蘇って懐かしかった。古いELLはもっと梁が下の方にあったような気がするけれど、これ以上低かったら成立しないよなとも思うし、多分僕の頭の中で、当時この天井落ちてくるんじゃないかと思いながらライブを見ていた記憶がおかしな方向に増幅されただけなのかもしれない。ユタ州という検索してもなかなかヒットしなさそうな名前のバンドのこの曲はシンプルで勢いがあって、ロックの原点のように思える。それは今のオシャレロックしか知らない人からすると基準の外にあるように感じられるかもしれないが、だとしたらそんな基準はつまらないぞと僕は言いたい。27さいで夢を見るという歌詞にも勇気づけられるが、では10代で夢を見て突っ走ることと較べたら27さいで夢を見て突っ走るのには逆風が吹くはずで、37歳で、47歳で、57歳で夢を見ようとすると倍々ゲームで強い逆風に晒される。それでもいいじゃないかと平気の平左で突き進むためには、こんなシンプルで理由なんてない自信やリズムが必要なんだろう。幼児の頃に親に敷かれたレールを守られて歩むだけではない、自分の足で道を斬り拓こうとする人たちすべてに、こういうシンプルなロックを捧げたい。
(2016.1.26) (レビュアー:大島栄二)
 


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