Carpenters『Close To You』 Next Plus Song谷口深雪『はじまりの色』

北航平
『endless cycle of rebirth』

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 音響心理学で、カクテルパーティー効果というテーゼがある。その名のとおり、なぜ、賑やかなカクテルパーティーの最中でも”必要な音“だけを聴き取ることができるのか、という心理的作用をいう。自分にとって不必要かもしれない雑音は誰かにとって意味ある音で、逆にいえば、隣の部屋の会話が雑音にしか思えないということも出てくる。京都在住のアーティスト北航平の作り上げる音は穏やかでどこか残酷な優しみを持って、五感に迫り、日々カクテルパーティーが行なわれているような喧騒を潜み抜けてくる。不規則なリズム、あっという間に通り過ぎるように軽やかに、でもどこか寂寥をもって響くカリンバ、蹴鞠のようにやわらかく撥ねるピアノ、透明性溢れる電子音のかさなり、それに爪を立てるようなノイズ、そして、鉛筆でものを書く音などサウンド・コラージュが一瞬、消えるために鳴らされるようでもある。この曲以外でも、生活音を細かく微分し、風鈴、水滴の音までがひとつの音楽として風景の中に混ぜ込まれている。一聴、エレクトロニカ、IDMとしてカテゴライズされるような音楽と思えもするが、精緻には違い、細部にはDJ SHADOW、Nujabesなどから通じるブラックネスが底流にあり、そこにサウンドアートともいえる”見る音響空間“への道順が見えてくるナイーヴネスがなにより魅惑的に映るのが彼のチャームであり、特徴かもしれない。彼自身にとって必要な音だけがめぐる展開の中に身を寄せていると、ちまたの不機嫌な騒がしさ、雑音を宥め賺すようにこちらの音への調性感覚を変えてくれる小気味よさに虜になると思う。
(2015.10.26) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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