ローザ・ルクセンブルグ『フォークの神様』
noid『ヨルヲアルク』
吉田拓郎
『ファイト!』
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中島みゆきのこの名曲は多くのシンガーがカバーしているが、本家の歌がサビでシャウトする分そこに注目が集まるようで、それとは対比するようにサビをさらりと歌う吉田拓郎のこのバージョンが個人的には好きだ。そのことによってAメロBメロの導入部分の歌詞が鮮明に浮かび上がるし、心にスーッと沁みてくる。もちろんそれは中島みゆきの作詞能力の高さ故なのだが、それを明確な絵に変えていく拓郎の表現力にも凄いものがある。この曲は1983年にラジオ番組に寄せられた葉書を題材に作られた曲で、当時はまもなくバブルに向かうという、誰もが未来に希望を持っていたはずの時代。そういう時代にこういう歌詞を書くシンガーたちは一部で「暗い」と揶揄されることもあった。しかし今、失われた20年を経過して、日本では若者に明るい未来が見えにくいと言われるようになった。歌詞の中で「私 本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段で/ころがり落ちた子供と つきとばした女のうす笑い」と歌われている。それは今、電車のベビーカー問題で行われていることとほとんど同じだ。当時はそれが見られないように薄笑いするだけだったのかもしれないが、今は公然と薄笑いする人が増えてきている。「私 驚いてしまって 助けもせず叫びもしなかった/ただ恐くて逃げました 私の敵は 私です」という歌詞を、22年前に書いて公表した中島みゆきは、単に暗いシンガーなどではない。今も僕らに突きつけられる重い言葉なのだろう。闘う君とは、僕のことだろうか。これを読んでいるあなたのことだろうか。震えながらも、世の中の理不尽と闘わなければならないのは、時代に関係なく、正義を求める人の責務だ。
(※2018.1.31時点で動画が削除されているのを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます)
(2015.6.20)
(レビュアー:大島栄二)
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