まずは彼らの帰還を喜びたい。06年に大阪で活動を開始した際のデモを筆者は持っているが、ギターロック・バンドの原石としてそのバンド・アンサンブルのタイトさに魅力も感じていた。一般的には、08年の「Ray」というシングルのスマッシュ・ヒットだろうか。切々と綴られるロッカ・バラッド。“セカイ系”に準拠する意味性と止むを得ない多くの誤訳、そして、“I will die for U”をユースとして直截的に描ける印象を持たれていたのかもしれない。ただ、その後の着実なライヴ活動、作品のリリースとともに知名度も人気も上がっていった。そんな中で、バンドに翳を落としたのは2013年のギターのタナカヒロキの不慮の事故に伴う右手首の骨折という大きな出来事であり、活動休止をやむなくされた。そこでの苦難の時期を経て、リ・スタートされるこの『Wait?』はかのナンバーガールやバンド・アパートを思わせる鋭角性と、よりシビアに見定められたリリックと翳りさえ含んで進もうという気概がヘビーに響くミニマル・ファンク調の曲。ここで、新しい音楽語彙と底辺から空を見上げる覚悟を定めた彼らの今後の道は荊ではないだろうと思う。