大滝さんの音楽に対する「新譜というものはない、すべて既発曲のオマージュである」という考え方の影響は大きいです
松浦:オマージュという意味で、アルバム・タイトル名を最初に聴いたときにSo Niceの響きよりも先に、so niceというバンドを想い出したのですが、ママレイド・ラグは自分の影響を受けたアーティストへの畏敬と、自らの音楽への気骨に満ちた活動をしていると思います。「Lazy Girl」のようなスワンプ・ロックにはCCRの血脈を、「Oh My Girl」には1960年代のアメリカン・ポップスの持っていたメロウネスを、そして、各所に昨年末に惜しくも逝去されました大滝詠一さんへの思慕も見えます。シーンの移り変わりや世の中の状況の変化も激しい中で、ママレイド・ラグをずっと続けてきた田中さんの「音楽」への姿勢を改めて聞かせていただけますか。
田中:「So Nice」というバンドは存じ上げません。大滝さんの音楽に対する考え方の影響というのは大きいですね。「新譜というものはない、すべて既発曲のオマージュである」という考え方ですね。しかし、彼だけではないんです。例えば、エリック・クラプトンも「自分がつくり出したのではない、BLUESを継承しているだけだ」と言っています。僕はその考え方に強く賛同します。しかし、それらは自分というフィルターを通す事によって、全く違う作品に生まれ変わるんです。そのフィルターをいかに質の高いものに保っておくか、というのが、アーティストとしての重要な責務だと感じています。
松浦:良ければ、最近よく聴いているアーティストや作品がありましたら、教えてください。
田中:オールディーズはよく聴きますね。(エルヴィス・)プレスリーやエディ・コクラン…完成されていますから。また、実験の時代で、アレンジに於いて触発される事が多いのです。ただ、制作していると、音楽はあまり聴きません。暇がないのです。
松浦:最後に、このmusiplというサイトは、まだあまり名を知られていないアーティストを紹介しながらも、名前は知られていましても、今一度、再評価やしっかりとしたレビュー、紹介をするべきではないか、という基軸があります。田中さんから弊サイトにいただいたメッセージに“musiplのレコード評には、どこか現代のそれには無い、繊細な分析と文章があるように思います。”とありますが、それはママレイド・ラグの音楽にも感じます。それこそ、なんとなく聴いていたらわからない、細やかな音響への配慮然り。ずっと知っていた方や、気になっていたものの、このアルバムでママレイド・ラグを初めて聴くという方もいるかもしれません。そうした方々、musiplを読んでいる方々へ何かメッセージをいただけますか?
田中:僕の音楽に、何か、明確な「メッセージ」の様なものはありません。音楽とは僕に取って、背景に無言で流れているものなのです。例えば、ヘッドフォン・ステレオで聴きながら街を歩いている時、カーステレオで聴くともなく流している時、夜、寝る前のゆったりとした時間に音楽を掛けた時、聴いてくださった誰かの心のどこかを啓発出来たのだとしたら、それだけで僕はうれしいのです。そんな風に僕は音楽を聴き、そして感動して来たのですから。
(2014年5月1日)
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