ナミオカコウタロウ『旅の途中』
スピッツ『優しいあの子』
秋山黄色
『夕暮れに映して』
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絶望しそうな比較的重いテーマを歌ってるのに、この軽やかなサウンドは一体何なんだろう。こういう内容の曲はどうしてもマイナーなコード進行だったり演歌のように半分泣いてるような歌唱だったりというのが定番で、それはそういう内容を持っていたり歌いたがる人が好きな音楽的表現方法がそういうものだということに理由があって、だからそういう悲しそうな内容の悲しそうなサウンドの曲が巷にはあふれている。でもそれじゃあまりにも救いがないよな。おそらく、そういう表現をする人の多くは、救いを求めているのではないし、そういう状況から脱しようとしているのでもなくて、ただ、そういう悲しみとか傷とかの状態を愛しているのだ。傷をなめあうというか、その状態に共感するもの同士で寄り集まって、悲しみに浸る。その浸ってる状態に酔っているのではないだろうか。それは別に悪いことではないし、悲しみに浸ることも癒しの方法だったりする。だが、悲しいからこそ明るくポジティブに気持ちを切り替えることも大事。ずっと悲しみに浸り続けてて、人生が好転することなどないからだ。
そういう時に、やたらと能天気なポップミュージックを聴くというのもいいけれど、それだと単なる現実逃避にしかならないし、傷は傷として正面から受け止めて、逃げること無く受け止めて、その上で気分を上げていくポップなサウンドを聴くのがいいんじゃないかな。そんなのほとんど無いんだけれども。その点この曲はとてもポップで明るいサウンドで、それなのにヘビーな内容を淡々と歌っててすごいなあと思う。あんまり知らなかったミュージシャンだけれど、10万回以上再生されてて、チャンネル登録も5万人以上で、結構人気ある人なんだなあ。閉塞感があるという時代に、多くの人たちはこういうサウンドを求めているんだなあと、あらためて感じる。良い曲です。
(2019.9.20)
(レビュアー:大島栄二)
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