Iggy Pop『Run Like A Villain』
アルコサイト『東京』
ナキシラベ
『ARCHE』
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ナキシラベの新MVカッコいいな。前回レビューした曲よりも、ツインボーカルのいわさきゆりえの歌が明確に入っていて、さらにカッコいい。さすうきょうの歌もかなり低音域もカバーしてて、そのレンジの広さとそのすべてでインパクトある歌声が披露されていて、1年前よりもさらにパワフルになったのではないかと感じる。彼らの曲を聴いてまずそのボーカルの強烈さに意識が向かうのは当たり前だろうが、今回の曲ではまずリズム隊を中心としたサウンドのパワフルさに注目すべきと思う。実際、たくさんのMVをみている中で、最初これが過去にレビューしたナキシラベのMVだと最初は気付かず、さすうきょうの高音域ボーカルが出てくる前の段階で「お、この曲、グルーヴ感ものすごいな」と注目したのだった。ドラムのタムだろうか、ひとつひとつの打音がくっきりと聴こえていて、その粒の揃いっぷりに驚かされる。レコーディングする前の音作りとマイク立ての時点で仕上がりの音を想像して計算しているのだろうし、ミックスの際にもドラムがちゃんと出るような注意が払われているのだろう。この粒の揃ったドラムの音ひとつひとつは想像以上に軽くて高音で、歪んだり、重低音バシバシという感じではない。なのにサウンド全体が低いところで鳴り響いている印象に仕上がっていて興味深い。これはドラムと共にリズム隊を形成するベースの存在によるものだろう。ドラムの音がくっきりとしているのとは対照的に音域のハイのレンジを大胆にカットしてでもいるかのような超低音に仕上げられていて、注意して聴かないとベースの存在に気付かないくらい。しかしそのことでサウンド全体が無意識のうちに重低音サウンドのグルーヴとして成立しているのだろう。ロックバンドは魂が重要でサウンドは二の次だという意見の人も少なくないし、僕自身も魂こそロックの重要な要素だと信じているが、ではサウンドがスカスカで魂がリアルに浮かび上がるのかというとそんなことはないわけで、この曲のように練り上げられたサウンドに支えられることで、その魂とやらもしっかりとした重心を持つに至るのだ。何度聴いても軽くなったり薄まったりしない、ロックの名曲の資格を十分に持った曲だと思う。
(2019.8.8)
(レビュアー:大島栄二)
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