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Bacon
『スタンドバイミー』

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 この学生服の似合わないこと。いや、似合わないのか、似合い過ぎているのか。中学生高校生なんて大半がこんなダサさじゃないだろうか。そうだそうだ、本当にダサくてリアルだ。学生服が似合わないのではなくて、学生服がダサいのだ。こういうダサさを表現しようとすれば、例えば岡崎体育あたりだったらいかにもなダサさを見せてくれるだろう。しかしそれはリアルな中高生のダサさではなく、いかにもこうだよねと誰もが納得出来るようなひとつのステレオタイプになるだろう。しかしこの体格に合ってなさそうな少々ぶかぶかの学生服が、どこの知り合いに借りてきたんだいといった感じで、それが、3年間で、いや6年間で身体が大きくなるんだからかなりぶかぶかな学生服を買っておこうという、家計優先の親の思惑で不格好な学生服を着させられているダサい中高生のリアルに到達しているように思える。
 Baconというバンドは結構以前から知っていて、なんで記憶に残っているのかというとホームページのプロフィール欄の詳細さだ。彼らのサイトを見てもらえば一目瞭然だが、2000年の結成から現在までの活動の詳細が細かに記載されている。それがかなり大きめのフォントで表示されているものだから、現在の活動を知るためにはずいぶんとスクロールしなければいけない。いや、そんな過去の活動歴の細かなライブ日程とかもういいですから。それらのライブでどんな気分だったのかとかどうでもいいですから。そう思うけれど、彼らはそれを書きたいのだから仕方ない。彼らというよりも、ボーカルのこうどたくや氏なのだろう。直接会ったこともないのであくまで推測だけれども、過去を切り捨てて前に進む人と過去を引きずって前に進む人がいるとすれば、彼は間違いなく後者。僕自身そうだからその心持ちはよくわかる。他人にはもうどうでもいいことだとしても、自分にとってはめっちゃ重要。だからそれを引きずりながら、大切にしながら、日々を過ごしている。まあ面倒臭い性分だ。しかし、過去を引きずりながら生きる派の人からすれば、過去の積み重ねがあるから今があるんだろとしか言いようが無い。そういう理解をした上で、このMVを見ると少しばかり見え方が変わってくるのではないだろうか。
 セーラー服の女の子の写真から始まるストーリーは、やはりダサい白のパーカー姿の男性が自転車で走り出す。そのパーカー姿と切り替わるようにダサい学生服姿が映る。なんとなく違和感のあるダサい青春ストーリーだが、学生時代に死に別れた彼女のことをいつまでも忘れられないという話なのだ。これはこうど氏のTwitterでも説明されているので確かだろう。それが事実なのか、それともフィクションなのかはどうでもいい。しかし過去をどんどん切り捨てて前に進むタイプの人であれば、いくら悲しい過去であってもキレイさっぱり切り捨ててしまうだろうし、だとすればこんなストーリーを考えたりもしないだろう。青春時代の死んだ彼女を忘れられない青年は、その他の想い出もみんな忘れられずにいて、記憶の重みの中で不器用な人生を歩んでいくのだろう。その是非はともかく、そういうの、よくわかる。ダサいなと思うけれど、ダサいから悪いなんてことはなく、むしろ美しいと思う。
 そんな過去を引きずるタイプのこうど氏が率いるBaconが、明日19年のバンド活動を集大成するようなベスト盤をリリースするらしい。19年の活動を15曲のベスト盤にまとめたそうで、もっとたくさん収録すればいいのに。3枚組60曲くらいにすればいいのに。いやそれは冗談としても、彼らの過去引きずりっぷりが余すところなく聴けるのではないだろうか。
(2019.7.9) (レビュアー:大島栄二)
 


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