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Ellie
『So I』

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 人の進化ってほんの半歩先に行く道をどうやって探すのかということに尽きる。その半歩先に行く道というのはアイディアとヴィジョン。技術ではない。音楽を外に持ち出したのはラジカセであり、数十年前にはイケてるヤングはゴツいラジカセを持って外に出た。屋外で音楽を聴けるというのはライフスタイルの新たなヴィジョンだった。それをポケットに入れさせたのはSONYのウォークマンで、いくつものカセットを持たずに音楽そのものを携行可能にしたのがiPod。それらは、技術がベースにあるが肝は技術ではなくてヴィジョン。人々はそのビジョンに自分の可能性を重ねるから熱狂してそういったモノを支持して受け入れてきた。しかし技術をベースにしたヴィジョンはすぐに模倣され、同機能のモノが世の中に溢れていく。ヴィジョンを提示する人は過去に囚われることなく新たなヴィジョンを提示し続けていかなければすぐに自分が過去の歴史の人に成り下がっていく。
 Love Tambourinesが登場した90年代前半は、渋谷系という音楽が時代の先端を行っているなという雰囲気に盛上がっていて、彼らの音楽も時代の先端を行っている印象が強かった。HIP HOPバンドとディーバ系シンガーがその後多数出てきたことからも、彼らがその走りだったことは間違いない。彼らはある意味ウォークマンでありiPodだった。しかしその後後発のアーチストが同等かそれ以上のパフォーマンスを発揮していったことと、彼ら自身が内部分裂をしたこととで、いつの間にかシーンからは消えていった。ellieさんのソロ活動はあったけど、Love Tambourinesの頃の活動とは較べるべくもない。その後はSNSで炎上したりもしたし、ウィキペディアからリンクされているかつてのellieのオフィシャルサイトはいつの間にか中国語のゲームサイトになっていたり。だがこうして11年ぶりに新作が発表されて、なんか嬉しい。これが復活と呼べるほどの活動なのかというとまあそれは別の話。もう一度半歩先を行くような活動ができるとはなかなか思い難いが、かつての大きなバンドが解散して久しいのにファンたちのノスタルジーを狙ったビジネス的な思惑で繰り広げられる○○周年再結成プロジェクトなどとはまったく違った、本人の断ち難い表現への想いからやむなく始まるこうした表現活動は、なぜだか取っても嬉しい。
(2018.8.25) (レビュアー:大島栄二)
 


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