アナトオル・フランス『もうだめだ/OK』
快適な暮らし『独りで歩く午後』
KAN
『長ぐつ』
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以前に、
このmusipl編集長の大島氏がKANについて取り上げていた。そのときは『50年後も』
だったが、彼は『愛は勝つ』以前と以降で変わったのではなく、以降で自身の音楽への向き合い方が変わり、その後もずっと仏留学や模索を経て来ている珍しいアーティストでありコンポーザーであると思う。たとえば、エルトン・ジョンやビリー・ジョエルの有名曲がどんな形式で流れても分かるように、KANは潔くもポップネスの振り切り方と茶目っ気を右顧左眄し、職人気質な昔ながらの食堂みたく味を絶妙に変えず、弾き語りやバンド・セットなどのライヴでアレンジメントを変えて伝わる曲をオーディエンスに届ける。勿論、そこには『愛は勝つ』もある。そして彼のオマージュ精神も好きだ。槇原敬之氏への敬意溢れる『車は走る』をはじめ、シャンソン、ジャズからライヴでは多様で愉快な演出で楽しませてくれる。KANはラジオで小沢健二の『流動体について』についての感想として、曲そのものの独自性に触れつつ、ストリングス・アレンジの服部隆之氏の凄さに唸っていた。そういう人だ。ここでは挙げきれないが、彼の曲で好きな曲は多い。『めずらしい人生』、『指輪』、『50年後も』ももちろん。
ただ、“これ”というものは捻くれ者の本懐でライヴ映像は上がっていなかったりする。トッド・ラングレンみたく。ここでの『長ぐつ』は誰かが作った映像ながら、また、KAN自身が職業シンガーソングライターとして過渡期に差し掛かるときの小品ながら味わい深いものとしても今でもよく聴く。平易な歌詞、分かりやすいメロディ、もう「そこ」にあったかのような歌。こんな歌がもっと増えたらいいな。ここまでストレートにポップに“愛してるを歌える”アーティストはなかなかいない。もっとさりげない普通の愛の歌を聴きたいと思う。愛の歌が愛で間に合うなら。
(2018.4.7)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
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