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アキオカマサコ 『Less is more 〜より少ないこと より豊かなこと〜』

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 北海道をベースに活動しているシンガーソングライター。力を入れず、かといって力を抜かず、適度な等身大の歌声が心地良い。MVでは笑顔なのか諦めなのか、内心を読み切れないニュートラルな表情で淡々と歌っている。そのあまりのナチュラルさに、このシンガーがどういう人なのかをつかみきれずに5分が過ぎる。そしてまた最初から。その繰り返し。歌の中で「あなたはあなたになればいい、それでいい」と歌われていて、きっとこの曲の内容的にはサビなのであり、もっとも伝えるべきポイントのはずなのに、それが1度ではスーッと入ってこない。何故なんだろうか。考えた末、この人はほとんどガツガツと前に出ていこうとしていないということに勝手に落ち着く。シンガーとして人前で歌おうという人は、基本的にガツガツとした何かを持っている。人見知りだったり恥ずかしがりやだったりすることももちろんあるが、それでも芯のところでは前に前にと出ていく何かを持っている。だが、どうもこのアキオカマサコという人にはそれが見当たらない。いや、絶対にあるはずなんだけど、見えてこない。ユニークだなあと思う。地方で活動するアーチストは、ある段階で「東京へ」と思ったりする。それは東京がいいのではなくて、東京に成功があると信じるからだ。移住することは飛躍であり、チャレンジである。だが時としてチャレンジは背伸びでもあって、背伸びが必ず成功につながるとは限らない。そして、成功することによって生活や人格が変化することもあって、それが幸せとは真逆の方向に向かってしまうこともある。歌の中の「あなたはあなたになればいい、それでいい」というフレーズに、それとは違うベクトルの幸せを感じる。自然の中で彼女が歌う。美しい。ガツガツと迫ってこない、大切なメッセージが含まれていると感じる。
(2017.7.28) (レビュアー:大島栄二)
 


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