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赤い公園
『恋と嘘』

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 赤い公園を初めて観たのは2012年の大阪城野外音楽堂でのイベントで、短い時間だったが、オルタナティヴな音ながら、また妙な魅せ方をするバンドだなと思ったのを憶えている。印象深かった「塊」はプログレッシヴな展開が目まぐるしく僅か数分の間に詰め込まれていて、エゴ・ラッピンや椎名林檎に近い濃密な香りもしながら、全くエキセントリックとは個人的に思わなかったが、その激情的で切ないパフォーマンスはこれからどうなってゆくのだろうという鮮烈なものだった。その後も、彼女たちとしか言えない活動を続けていき、曲ごとに色を変え、どこかアヴァンギャルドな要素を残しながら、開けてもいった。国民的アイドル・グループにギターの津野米咲が詞曲を提供したり、ただ、ポップな中に気になる刹那さや毒味が入っているのに気付いてしまうような一筋縄でいかないところもつねで、奔放なようで、都度の沈思と試行錯誤の中から適解、せめてもの少し前の光を探すように音楽を紡いできたキャリアの中で、この「恋と嘘」はaikoやmiwaと最初、聴き間違えたほどの清涼でチアフルなラブソングだが、赤い公園といえば納得できてしまう一曲でも、と。MVは、デート前のどこにでもいる一人の女の子の何気なさを健康的に微笑ましく描きながら、深刻で重い時事が多い瀬にこその彼女たちなりの反骨精神にも思えて、時代が不穏になろうが厄介な公の約束事で雁字搦めになろうが、変わりないものはあるのならば、それはあくまで個々の対象への距離を踏まえたゆえの”いとおしみ”なのかもしれず、そこがまだ人間で居られてよかった理由のひとつなのかもしれないと切に想う。また、ギターソロや要所のフレーズ、アレンジメントなど何度も聴いてみると、すこしいびつで、一聴のときのストレートなラブソングからじわじわとイメージが変わってくるのも面白い。赤い公園だと、どんなラブソングも胸打つものになるのを暗黙知に決してするのではなく、彼女たちが「知」をランドリーに入れて回しているあいだに思わぬ発見、創造性への作用した知からまた方法論を考えてゆくように、気まぐれなバンドなようでどこか一貫していて、じわじわと拓かれていった方向に進んだという脈絡とも違う、纏めや掴みどころのなさもいい。「分かりやすさ」ということ自体が知的な怠慢で、レンズを押しあててみると、どんなことでもそんな要約されない。だから、提案するように投げかけるこのシングルにはメンバーたちが何より楽しそうで受け手、観客の合唱とスイングを待つポジティヴな「スーパーハッピーソング」もあり、二曲合わせて聴くと今のモードの赤い公園はまた妙な真っ直ぐさとともにより多くの人に届いてゆく気がする。併せて、ほんの先の未来にさえ尽きない不安と、ただ同時にどこか胸が弾む今を生きるエイリアンズたちに向けても優しく。多くの人たちや声の大きい人たちと同じ向きに進むのが正鵠を射るばかりじゃなく、ときに振り返って、気付いた顔があれば急いで折り返せばいいだけで。嘘の予感でも。
(2017.5.15) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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