FINLANDS『月にロケット』 Next Plus SongPorter Robinson & Madeon『Shelter』

Bing & Ruth
『Starwood Choker』

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 ウィーク・デイの零時にTOKYO FMをキーに『ジェット・ストリーム』という長寿番組がある。基本、イージーリスニングに近い音楽を軸に、世界各国の旅をモティーフにしたナレーションが入る内容のもの。著名なプログラムなので細かい説明は、必要はないと思うが、初期の亡き城達也氏の時代から現在の大沢たかお氏の機長時代に至るまで、ラジオをつうじて架空旅行へのナビゲートを誘引してくれていた。今は身近な内容のナレーションやアップデイトな曲が増えたものの、以前の海外旅行とはそれこそ高嶺の花で、一般的に想像上のものでしかなかった。今みたく、LCCを利用してみたり、簡単に行けるようになったという前提条件を保留してみても、まだまだパスポートを取って、海の外へ出るという行為には障壁が多いところはある。だから、異国へ、また異国「情緒」へ、遠景へ夢を見ることができる。

 夢を見ることができる世界の余白があるうちはまだ、幸福な近似感情をみんな、描いているのだと思う。「この空は、遠いどこかの空につながっている」というように。

 ビング・アンド・ルースの曲を聴くと、遠いようで、とても近くなった異国へのロマンティシズムが蘇る。不定形な楽団といえども、主として率いるカンザス出身のピアニスト、デーヴィッド・ムーアの感覚がそう思わせるのかもしれない。この曲も静かなアンビエント・ミュージックのようで、ミニマリスモの中でピアノの音色が印象深く刻まれて、さらに反復性の中に微妙なサウンドスケープの遷移が産まれながら続き、この曲が含まれたアルバム『No Home of the Mind』は、参加アーティストは五名と絞られ、一年という長いスパンの中での入念な細部への拘りとハンドメイドな意識の下で作られたという。MVもSébastien Crosの幻想美が十二分に活かされている。

 忙しない日々の中で、遠路、または旅に出るのはそう簡単ではない。ただ、旅に出るための想映するための力学を音楽は補強してくれる。そういった要素が膨らめば、きっとややこしい国境、偏狭な概念は柔らかくほぐされるのではないかと思う。頭の中で作れられた家路が無くなっても、どこかへ帰られる路へと。
(2017.2.14) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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