マイアヒラサワ『話せてなかったこと』
Bing & Ruth『Starwood Choker』
FINLANDS
『月にロケット』
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テンポ良い楽曲とサウンド、かつ切れ味鋭い声で攻め続けていた印象のあるFINLANDSの、バラード。塩入冬湖の「これ、声帯切れたよね今」とついつい言いたくなるような、高音域でもけっして裏声やファルセットになったりはしない声が、聴いていてゾクゾクしつつも痛々しくて、自分の喉までやられそうな歌が好きだし、そういうファンもきっと多いと思うのだが、こうしてバラードを聴くことになり、「声帯切れたよね今」というようなシャウトも特に出てこない歌が、また心地良い。別に切れ味鋭い声や歌が無理した結果の産物なんかではなくて、自分なりに普通にやっていたらそういう声だったというだけなのだろうし、そもそも無理して歌って本当に無理だったら声なんて一発で枯れてしまうわけで。だから、リスナーの側が「声帯切れたよね」なんて思う必要はなくて。それはマライヤキャリーが超人のようなオクターブを歌えたとしてもそれは彼女の天性のようなもの(いやもちろんボイストレーニングはやってるでしょうけど)なのと同じで、塩入冬湖のキレッキレな歌唱もまた、そういう珍しい種類の歌声として(好きな人はファンとして)愛でればいいのだろう。でもそういう歌唱法や、HPにもあるような「ライブ中どんなに暑くても決して脱がいないモッズコート」などに目や耳を奪われている間はまだ表面的なものしかわかるはずも無いわけで、だからこの曲のように、キレッキレな歌唱を一旦封印したかのような曲を聴くのは、表面を一枚めくった価値のようなものに触れる良い機会なのかもしれない。無論、MVを数曲聴いただけで本質まで理解するというのは難しい訳で、ここでなんかひっかかった人は、さらにCD買ったりライブに行ったりすればいいのだろうと思うけれども。
(2017.2.13)
(レビュアー:大島栄二)
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