Akira Kosemuraの今の八面六臂のペースと作品、活動を知らないのは勿体ない。以前にもここで紹介したのがほぼ三年前になるが、現在進行形で進めていたもの含めて、昨年、2016年は五年振りのフルアルバム、完全即興のピアノソロ作品、EPリリースから、新たなプロジェクトとしてフォトグラファーの新田君彦氏と音楽と映像のプロジェクト『Spread The Branches』を始めるなど多くの音を伴った情景を届けてくれた。特に、五年振りの六枚目となるアルバム『MOMENTARY: Memories of the Beginning』は渾身の内容だった。説明書きの一部を孫引くと、“アニマ・アニムスにみられるような、人間の根源的且つ無意識化において繋がっている理想像への憧れ。”という冒頭の言がまず意趣深い。心理学者のユングの用語で、男女の相互関係性の原理を巡るファンタジーとロゴスを巡るもので、多くのゲスト・ボーカリストを招き、構築されたアルバムの音楽をそもそも、“音楽”と名付けるのが相応しいのかも不明瞭になってくる。その中でも、映像美と透徹なlasahのボーカルが映えるこの曲がこれからの光を、そして、虹の彼方の平易な具象性を安易な言葉で完結させず、目的までのショートカットを急がせず、ふと迷い込んだ深層心理の露地を照らすような気がする。