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寺尾紗穂
『楕円の夢』

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 2016年ももうすぐ終わります。あなたにとってどんな1年だったでしょうか。  僕にとっての2016年、いろいろありましたが、思うようにはいかないものだなというのが正直な感想でしょうか。人の一生なんて簡単に説明なんかつかないもので、自分を価値あるものだと思いたいからいつも虚勢を張る。あなたもそうでしょう。人は阿呆だからそういう人の虚勢を実像だと思うし、信じる。信じられれば信じられるほど自分の実像と他人からの評価は乖離していき、ギャップを埋めようと努力する。努力が本当に自己向上につながればハッピーだけれども、そうならない時も当然あって、そういう時には自己嫌悪に苛まれることになる。だったらいっそ他人からの評価など無視すれば良いのであって、殻に閉じこもろうとするのだけれど、では本当に他人を遮断できるのかというとそれも難しいこと。

 寺尾紗穂が昨年リリースしたアルバムのタイトル曲のMVでは、歌うこともなく微笑む彼女と、けっしてフォトジェニックとは呼べないオッサン2人が太極拳のような怪しいダンスを続ける映像が交互に繰り返される。なぜこのオッサン2人なのか。わからない。静かな音に静かに重なる歌声。引き込まれる。

  私の話を聞きたいの 本当はどちらか知りたいの
  どちらも本当のことなんだ そんな曖昧を生きてきた
  明るい道と暗い道 同じひとつの道だった
  あなたが教えてくれたんだ そんな曖昧がすべてだと

 何かを明確にしたいというのは当然の人の願いで、では明確にできることばかりなのかというと実際にはそんなことは滅多に無く。明るい道と暗い道がどちらも同じだなんて、この歌はすごいことをさらりと言ってくれるよなあまったく。人の心なんて容易に伺い知ることはできず、それを知ったかと自惚れてみたら、それもまた虚勢だったと思い知らされ愕然とする。はっきり言えばそういう1年でしたよ、僕の2016年は。愕然としたところで日々は流れていくものだし、僕なりに必要とされている局面もちょっとはあるようで。musiplも1000個のレビューを重ねて、気付いてみたらけっこう遠くまで来ることができたなあと。だったらまたコツコツと小さなものを積み重ねていくことが実際には早道なのだろうし、もう少しコツコツと進んでいければいいかなあと、そんな想いです。みなさんの2017年が素晴らしいものになりますように。
(2016.12.31) (レビュアー:大島栄二)
 


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