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bonobos
『Cruisin' Cruisin'』

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 言葉が其処にあっても、なだらかに文脈が無いと暴走する。暴走した言葉は結果、大文字に肥満化して、関係ないと思っていた人たちさえも巻き込んでしまう。文学的な、哲学的な言い回しはもう回りくどいのだろうし、言葉の「元を取れない」かもしれないから、比喩的に、フードコートに溢れる言語配置を探してみる。結果、どの店の行列に並んでも、同じような気分になって、その気分は蒸発してしまうときに、ここに来なければよかった、いや、他はどこにあるのだろうか、とオルタナティヴに進める瀬だろうか。選択肢は無数にあって、踏み入り易い場所は増えて、なんだか夢みたいにグローバリゼーションは有効可能な圏内で疎外をしない。

 疎外を(され)ないままに在ろうとするのは難しいようで、視角の切り換え次第なのだと思う。例えば、精進料理や懐石料理で異国の客人をもてなしたとき、礼節を弁えて、写真も撮らず、ただ、記憶と想い出を弁えて、庭園を観たり、色んな話をしたりするときの時間の流れ、や喫茶店で穏やかに想い出話に暮れる感情の解され方。はたまた、いつかの高級住宅街の寂れた後で、ぽつりぽつり立派な家が売りに出されているのを見ながら、昔ながらの小さな画廊があって、入ってみた感じは悪くない。

         ***

 bonobosも実に、活動15周年。しっかりとした文脈の上で、この2016年にブレずに在る。マイペースに、当たり前にそこに居たようなバンドのひとつで、また、同時に、メンバーの脱退や変遷を経て、約2年振りの作品では彼らの人肌通う空気感と、アーバン・ソウルの彩りをなぞり、更に世界中に継承されてきた音楽的要素を並列に越えながら、彼らの過去の曲名「Thank You For The Music」というエコーの中に包み込まれる歳月を重ねてきたがゆえの軽やかさが込められていて、特にこの曲は美しく渡世の果敢なさを攫う。スムースで、本当に悪くない。なにかと再評価され続けるフィッシュマンズと比較された時期もあったが、彼らは彼らの温度でクルーズを進める。

 日々の当たり前の少し蠱惑的で、あくまでメロウなマジックみたく。静寂を鳴らすみたく。再び日常に還るもどかしさまでも行間に添えて。

   透けた葉脈に指をすべらす 静寂のフリーケンシー
   戦時下の夜のトポロジー 毎日の発光体
   今惑星の夜半球にきみだけの舟を進める時
   安心の国で暮らしな g’night,g’night おやすみ

 戦時下だからこそ、音楽とは輝かしくその意味を再付帯する。
 然りと文脈も含み、誰かを疎外もせずに。
(2016.12.16) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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