Lily Kershaw『Miss America』 Next Plus Songsyrup16g『Deathparade』

山崎まさよし
『名前のない鳥』

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 山崎まさよしの1曲ってなんだろうなと考えてもなかなか思い浮かばなくて、普通は「one more time one more chance」なんだろうとか思うんだけれどもそれも芸が無いじゃないって感じだし。なんとなく、なんとなくなんですが、山崎まさよしの曲はどれを聴いても同じように聴こえる! と暴言はこのくらいにして(ああ、全国5000万人の山崎まさよしファンからの怒号が聞こえます…)、この、どの曲を聴いても山崎まさよしだなと判るこの絶対的に確立されたスタイル(まだ言うか!)が山崎まさよしの山崎まさよしたる所以なのだと思います。

 で、この「名前のない鳥」が僕は好きなのです。淡々と切々と歌われる世界。名前のない鳥って、鳥だから普通名前なんて無いだろうと斬って捨てるのは簡単だけど、じゃあ名前って何だろうと考えると、それは社会の中で他の個体と識別するためのフラッグであって、フラッグに過ぎないんだけど、そのフラッグがなければ他との区別を付けることが難しくなって、それはつまり自分とは何かということを認識することが難しくなるということでもある。そんな鳥が空を飛んでいる。どこに行くのか。約束の場所って一体なんだろう。どこにそんなのあるんだろう。自分に名前さえないのに。すがる何かというのは単なるフラッグでしかない名前だったりするが、やはりそれが無いと自分がわからず、だから自分の意味もわからず、人間は鳥とちっとも変わらないよなあなんて、このしんみりした歌を聴きながら思わされます。

 日々嬉々として写真をアップしたりするSNSも、ある時を境に自分もそれを忘れ、他人も徐々にそれを忘れ、風に揺れて朽ち果てていく。mixiなんてみんなきっとそうでしょう。良いか悪いかは別としても、日々朽ち果てそうに放置されていくバーチャル墓標の数々に、死屍累々の想いを感じずにはいられず、そんな世界を自由に飛び回っていくには、いっそ名前など無い方がいいのかもしれないと、そんなことを教えてくれているような気がしてなりません。

(※2018.2.13時点で動画が削除されているのを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます)
(2016.11.26) (レビュアー:大島栄二)
 


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