中田ヤスタカ『NANIMONO feat.米津玄師』
CRASHBERRY『サマーサイダー』
Why not nil?
『My Favorite Songs (feat. 太田ひな)』
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洒脱でジャジーな展開と、エレクトロニクスの絶妙な組み入り方。フィーチャーされている太田ひなのアンニュイでどこか儚いボーカル、含みのある歌詞まで、例えば、ある夜に流星を探すために双眼鏡を持っていたら、となりに知っていた人が居たような気まずさのような何かまでナイト・ドライヴィング、その後の夜の恋人のために殉じたようなラブソングであり、同時に、聴き流させないこのスムースさの高度な演出が気にもなる。MVでの何気ない風景含め、他愛のない恋人を巡るラブソングのようで、そうでもないようで、また、クロスオーバーでもなく、カフェや待ち合わせのためのイージーリスニング・ミュージックでもなく、ずっと聴いていると、筆者的にあの、どこかビル・エヴァンスやキース・ジャレットがピアノの前で、猫背で黙る瞬間、に靜かに和性と艶やかさがむしろ浮かび上がるような姿が感覚裡に酔う瞬間がある。つまり、何かを明確に言っているようで、沈黙に近いような、あの―
おそらく、彼らの目的地は二人の部屋や日本のどこかではなく、併せて汎的なポップネスの適解を射抜くのを目指しているのではないような感じがある。「誰にも見つからない国」という歌詞のとおりGPSでも感知されない、どこにも知られない場所へ向けて今はハンドルを切っている最中なのだろう。昨今のシティ・ポップの潮流の一環にしては、寸前のところで唇を噛み、我慢をうながし、繰り返される、「あと少しさ」という言葉も意味深長でまた興味深い。ドライヴの中でのロマンス、研ぎ澄まされているポップネス、鬩ぎ合う恋慕だけでははかれない何かも感じるだけにこの先も俄然、楽しみになる。この先の、その場所まではあと少しさ、と願う速度は丁度、秋という季節の物憂さとこの音楽に染まる相性が高く、音楽が枯葉を誘い込む。
最後に、これをただのお洒落で済ませられるのではなく、いびつな細部にて考えさせられるところがある。特に、「その声は隠して」なんてフレーズは象徴的だと思う。蛮たる温度が抜き取られたがゆえの無菌室でのラブソングみたく。そこが今らしい、のだろうか。
(2016.11.7)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
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