Punch Brothers『Familiarity』
SHE IS SUMMER『とびきりのおしゃれして別れ話を』
SUPER BEAVER
『ありがとう』
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メッセージ性というのは単純でシンプルな方が強くなる。それが繰り返されることでさらに説得力を持つ。そんなことは分っちゃいるけれどもそんなことを表現できる人はほとんどいない。なんでだろうか。おそらく、そんな単純なことはわかってるよ今更言わなくたっていいよと思ってるからだろう。そういう意味ではこの曲はコロンブスの卵的な新鮮さがある。ありがとうありがとうと繰り返す。そのありがとうの理由が重ねられる。どれも、当たり前のことが並べられている。最初聴いた時は耳を疑った。こんなこと言うのかと。今の子たちはこんなに噛み砕いたことを言わなければ伝わらないのかと。でも、繰り返し聴くうちにそうじゃないのかもなと思い始めた。ありがとうは口にしても、その理由をちゃんと伝えることはあまりない。彼らが言ってることは本当に当たり前の、感謝されたら「おいおい、そこまで言われるほどのことはやっちゃいないよ」とひるみそうなくらいのことばかり。だから感謝する側も「そんなことで言うのもヘンだよな」と思って結局言わない。まるで電車の中でお年寄りに席を譲るみたいな、譲って拒否されたらイヤだから席譲らないみたいな、変な遠慮みたいなものが世の中に蔓延してるんじゃないか。だから席どうぞ。座ってください(おじいさんが座りたくなくても別にいいんです)」と言ってすっくと席を立つ若者が清々しいように、こんなシンプルなありがとうが、言われてみて初めてすごい力を持ってるんだなと気づいたりする。もちろん、SUPER BEAVERの演奏も歌唱もパワフルな表現がこのメッセージをさらに力強くしているのは間違いない。でもウクレレかなにかの弾き語りで蚊が鳴くような声で歌ったら伝わらないんだろうかと考えたら、やっぱり伝わるんじゃないかなあと思う。歌そのものが良い歌だ。SUPER BEAVERには他にもたくさん良い歌がある。言葉を伝える、そんな表現の才能が詰まった人たちなのだろう。多少やり過ぎのような気もしないではないが、才能無い人はやり過ぎようとしても出来ないことなので、やり過ぎるのも才能の証だといえるのかもしれない。
(2016.9.8)
(レビュアー:大島栄二)
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