Gotch『Good New Times』
RADIOHEAD『Daydreaming』
リコチェットマイガール
『ターミナル』
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曲が始まってやる気のなさそうな人が歌って、やる気のなさそうなギターが、ベースが、ドラムが演奏をする。演奏陣の手元を見るととにかく手数が少なくて動きもスローモーに見え、こんな動きでこの音が鳴るのかと不思議に思うが、どうやらそういうのもこのビデオのための演出のひとつなのだろう。バンドとはおそらく関係のない女性がビデオを通して登場する。この、女性が出てくるという演出は、メンバーが個々に演奏するシーンをインサートするというのと併せて
前作のMV
と同じ手法(ドラムがスネアだけ叩いているということも)なのだが、これを僕はワンパターンとして否定的に捉えるのではなく、MVを作品として連続性のあるものにしていこうという意志の現れなんだろうと感じている。それはフレデリックがひたすら踊っているビデオを作り続けるのとも似て。実はそういうビデオの連続性をバンドカラーの一部として打ち出しているバンドが意外なまでに稀なことを考えると、その部分だけでも興味が沸いてくる。前作の冒頭では屋上にへたり込むボーカルに手を差し出す女の子というシーンから始まるのだが、それは
さらに1年前のMV
に続くシーンという形になっている。音楽に限らずすべての表現は無から生み出すことであるとともに、様々な選択肢をひとつひとつ消していくことでもあるわけだが、そういう消去の過程でひとつの連続性を残していくということは、ちゃんと自分たちのなんたるかを見極め、そして覚悟していないと出来ることではない。今のような時代にバンドという集合体が成功をつかむことは簡単なことではないが、こういう意図的に何かをちゃんと選んでいる人たちには、どうか長くずっと続けてもらって、その結果本人たちも満足できる何かをつかみ取ってもらいたいと願う。ボーカル稲荷の声はとても特徴的で、これだから聴かないという人もいるかもしれないが、同時にこれだから聴きたいしクセになるという人も少なからずいるわけで、そういう人の心をがっちりつかんで、アンチの人たちなどねじ伏せていってもらいたい。同様に、なんだよやる気なさそうに歌って演奏しやがってという、この曲の冒頭だけを見て去っていく人のことも、なんかの方法でねじ伏せていってもらいたい。とちょっと思う。
(※2018.1.19に動画が削除されていることを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます)
(2016.6.6)
(レビュアー:大島栄二)
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