Guitar Wolf『チラノザウルス四畳半』 Next Plus SongLeon Vynehall『Blush』

ケリーマフ
『ニュー・トラッシュ』

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 一昨年のレビューが1年間アクセスランキングのトップ10に入り続けたケリーマフの新作MVはとてもシンプル、なのにカッコいい。このカッコ良さはいったい何なんだろうかとずっと考えて、理由はこのバンドの爬虫類性を浮き彫りにしたからだという結論に達した。よく見て欲しい。この吠えまくる独特の歌唱。これだけパワフルに歌おうとすると顔中の筋肉に力が入りまくりになるのが普通だと思う。が、ボーカルの瑞樹の表情に力などカケラも感じられない。眉間にシワが寄ることもなければ(一昨年のレビューでは「そんなに眉間に皺寄せて」とあるので、表情は変わってきているのかもしれない)、まばたきさえもしていないのではないかと思われる。その上瞼は常に半分閉じられているようで、でも完全に閉じられることはない。メイクなのか、それとも素顔なのか、半開きの眼には虚ろさではなく獲物を狙うヘビのような鋭さが感じられる。恐いのだ。怖いのだ。だがロックがロックである以上、こういう恐さ、近寄り難さがあるのは必然であろう。ロックもどきとロックとの決定的な違いがここにはあるような気がする。気がするというか、そんな風に感じる以外に思考が動かないような、まるでヘビに睨まれたカエルのような心境になる。その勢いで、ドラムkajiwaraの服の模様がヘビのウロコに見えてくる。こういうバンドの演奏は、やはり生で体験すべきだろう。ケリーマフのライブはベースのクボの怪しげな動きを伴う演奏スタイルも必見ポイントなのだが、このビデオでは瑞樹の表情にフォーカスが当てられつつもそういうクボの怪しい動きも十分に捉えていて、シンプルに見えつつも工夫に富む秀作だといえよう。
(2016.5.10) (レビュアー:大島栄二)
 


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