岡崎体育『MUSIC VIDEO』 Next Plus SongLIFE GUARD『ブルーライン』

Prince
『Kiss』

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 彼にリアルタイムで出会ったのは、すでにどこか伝説化し、成功をおさめたポップ・スターとして、1999年の終わり、筆者は今の”京都”が”KYOTO"ではないように、四条寺町通のレコード・ショップで『RAVE un2 the Joy fantastic』を買い、何度も聴き、そこから遡って過去のカタログも聴き漁った。当該作にはチャック・D、グウェン・ステファニー、シェリル・クロウ、アーニー・ディフランコなどの当時のオルタナティヴなアーティストの客演、参加もあり、内容的にも”ハレ”なムードに振り切れた快作だった。

 しかし、99年のこと。ブラック・ミュージック、リズム・アンド・ブルーズの意味が改変されてきている中でのそれはいささの浮いた表象性もあったのも否めない。同アルバムの中の佳曲「Tangerine」のラブソングの先には、例えば、レディオヘッド的な「kid a」が俟つ時代の切実な記名への希求性と楽観的な視角とはやはり、距離があった。かたや、00年代がリバイバルや、ときに匿名性を傘にする訳ではないにしろ、エクレクティックに自身の、内部手術しないといけない要請との難しさがあったこと。だからこそ、整形手術の果てに全く原型が見えなくなってしまったバンド、アーティストもあった。

 素晴らしい作品は多く、近作だと2014年の『Art Official Age』もよく聴いたが、なぜか、2002年のプリンス名義の『ザ・レインボウ・チルドレン』はいまだに何度も聴くたび、ぐっとくる。ジャジーなヒップホップの中で彼がただ神や永遠への願いをよせる。それだけなのだが、なぜなのだろうと思う。この数年、彼の目指そうとしていた場所とはこういったシンプルな欲動への回帰、そして、シンプルなロックンロールだったのではないだろうか、など当てどなく考える。

 近年のリリース形態のすべては、ファン以外には不明瞭にややなりながら、ライヴ・パフォー、マンスは円熟さも含めた見事さで、作品の質も目を見張るものが少なくなかった。しばらくこの後は、『パープル・レイン』や『パレード』、諸々のベスト関係において彼を取り囲んでしまう風潮もあるだろうが、不思議なもので彼の作品ほどそれだけを聴いていたとしても、いまだ、茫然と圧倒されてしまうというときがあることだ。先ごろのデヴィッド・ボウイの有名曲を或るバーで聴き続けていたら、何故だか時代の流れを感じたが、プリンスはそうではない気がすでにする。そこがむしろ恐ろしいところであり、唯一無比なポップネスを携えた象徴なのだと思う。だからこそ、この曲をあえて。

(※2018.1.19に動画が削除されていることを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます)
(2016.4.23) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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