hunck『曖昧クローバー』 Next Plus SongJAGUAR『だまってJAGUARについて来い!』

ムシケ
『アクチュアリティーのない夜に』

LINEで送る
 阪神淡路大震災の追悼のニュースが年に1度流れて、そういう時、残念ながら僕はそこでロウソクを持って参加している人たちと同じ気持ちにはなかなかなれない。何故だろうか。遠いからだ。それは当時東京に暮らしてて、神戸のことはやはり遠かった。怒られるだろうか。でも、程度の差こそあれ、数年前に起こった中国内陸部での大地震のことは多くの日本人は細かく覚えていないだろう。距離的にも心情的にもあまり近くないという理由で。5年前の今日のことは鮮明に覚えている。画廊で絵を見ていたらぐらぐらと揺れて、建物の中は危ないかもと思って道路に出たら、向かいのレンタルビデオ屋では棚にあっただろうCDやDVDが床に散乱していた。その後の電車ストップなど、それはリアルだったからだ。でもそのリアルの中で、僕らの心はどこに向かったのだろうか。本当にリアルに何かを感じていたのだろうか。下北沢から高田馬場まで徒歩で帰ったということ以上に東北の惨状をリアルに感じていたのだろうか。そして5年が経過した今、当時のリアルと今のリアルは同じ重さで自分の気持ちの中に残っているのだろうか。体裁を取り繕うことはできる。哀しみの面持ちをして頭を垂れていれば追悼の表面は完成する。今年もまた追悼という言葉が画面上に並ぶのだろうか。並んでもリアルではないし、並ばなくてもまたリアルではないという気がする。あくまで、気がする程度の想像でしかないのだけれども。この曲は当時の本心をそのまま出しているという点でとてもリアルだと思う。聴いていて、自分と物事の距離というものを考えさせられる。ああ、5年前はまだmixiも僕らの生活のリアルだったなあと、そんなことを思わされる。
(2016.3.11) (レビュアー:大島栄二)
 


  ARTIST INFOMATION →
           
 


 
 このレビューは、公開されている音源や映像を当サイトが独自に視聴し作成しているものです。アーチストの確認を受けているものではありませんので、予めご了承ください。万一アーチスト本人がご覧になり、表現などについて問題があると思われる場合は、当サイトインフォメーション宛てにメールをいただければ、修正及び削除など対応いたします。