caino『Parametric E.Q』
MUTEMATH『Monument』
二宮綾子
『Feel All Right』
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インターネットが発達して、音楽活動の裾野が広がったとよくいわれる。だが本当にそうなのだろうか。確かに自分の音楽を発表することはどんどん簡単になっていくし、それを誰かに販売することだって容易になってきた。だがアーチストの数は増えてリスナーの側からすれば良い音楽との出会いは逆に難しくなっている。今回紹介する二宮綾子という人の歌は、良い。パワーがある。パワーに裏付けられた繊細さもある。こんなライブを観ることができたらどれだけ幸福感に包まれるだろう。しかし、彼女の情報はネット上にはほとんど無い。だから音源を買って聴きたくとも、ライブに行きたくともその術は極めて限られている。しかも活動拠点は大分県だし。現在はその大分県でバーを経営されているらしい。そのバーで時々歌われたりされているのだろうか。よくわからない。よくわからないということがネット時代のひとつの価値でもあるようにさえ思う。多くのミュージシャンが自分の暮らす街から第一歩を始め、日本に、世界にと活動の場所を広めていって人気が上がることを夢見るのだろう。そのためにはネットは大きな武器になる。だが、武器とはいつも諸刃の剣で、莫大な力があると信じてもいつも裏切られる。大分で、歌を歌う人がこんなにもパワフルで切なくてリスナーの心に侵入する技を持っているというのに、その声はなかなか広がっていかない。ただ彼女の半径数キロ程度の中で響いているだけだ。だがそんなことをもったいないとかつまらないだとか言うことに意味があるのだろうか。広がっていくことに本当に意味があるのだろうかと、こういうライブ動画を見ると少し思う。その場所に、その時期にたまたま居ることができたことに感謝しつつ、そうではなかった人は手が届かないことを残念に思いつつも、では自分の半径数キロの中にある掛け替えの無い表現には手が届いているのだろうかと考えればいい。きっと、こんな感じのステキな何かは自分の近くにもあるはずだ。自分が気づいていないだけで。
(2016.3.1)
(レビュアー:大島栄二)
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