イエスマン『Googleダンス』 Next Plus Songcaino『Parametric E.Q』

ハンバート ハンバート
『おなじ話』

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 いつ聴いても不思議な気分になる。ハンバート ハンバートのことはとても好きなのだが、この曲は別格。男女の掛け合いトークのような構成になっているけれども、男性は女性がどこにいるのかも判っていないし、話をしようといっても「まず君から」と言い、次に話をしようと問いかけると返事が返ってこない。この曲については多くのファンがブログなどで触れていて、亡くなった女性との会話という解釈を披露している。論理的に考えたらそうだろうと思うし、そこに強く反論をするつもりはないが、その状況解説だけでこの曲の良さが全部説明できているのかというと、それはやっぱり違うだろうという気がする。僕はこの曲を独身だった頃に知り、聴いて涙した。その後も折りあるごとに聴いていて、だから結婚してからも聴いたし、子供が生まれてからも聴いている。その時々に感じ方は違うものの、程度の差もあれど、やはり涙したい気持ちが溢れてくる。なんだろうかこれ、曲のすごさなのか、ハンバート ハンバートのこの妙に感情をセーブした歌い方なのか、何なのかよくわからずに今も居る。この曲が細かな説明的描写を省いていて、ファンはいろいろ語るもののオフィシャルに説明が加えられたりもせず、ラジオドラマのように聴き手の想像に頼る部分が多くて、それが聴く人の多様な経験や背景に関わらずスーッと沁みてくるような、物語の核のようなものが剥き出しになっていることが大きいのではないかなあと思う。だから僕のような者があれやこれやと解説しようと試みること自体無駄で無粋なことなのだろう。彼らハンバート ハンバートには他にも沢山曲があって、もちろんそれらも素晴らしい曲の数々ではあるけれども、この「おなじ話」のような強烈さで毎回涙を誘うのはやはりこれだけなのだ。これからも僕のシチュエーションはいろいろ変わっていくだろうが、その度ごとにこのおなじ話は違った話であるかのように僕に迫って、涙を誘うのだろう。
(2016.2.27) (レビュアー:大島栄二)
 


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