ミオヤマザキ『バンドマン』 Next Plus SongPunPunCircle『Senro Zoi』

松任谷由実
『A HAPPY NEW YEAR』

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 ユーミンほど長い活動歴ある人の、どの曲に思い出があるのかと問われればきっと十人十色。セールス的には「LOVE WARS」や「天国のドア」といったあたりの200万枚を超えたアルバムに収録された曲が一番多くの人の耳に届いているのだろうが、荒井由美時代のセンスと才能をこれでもかと感じさせた楽曲をあげる人も多いだろう。僕はといえば兄が持っていた「PEARL PIERCE」をカセットテープに録音し、受験で訪れた2月の東京を歩きながらずっと聴いていたことを思い出す。その数週間に何度か雪が降り、慣れない街で遅刻せずに受験会場に着かなければと必要以上に早く出て、結果電車の遅れも無く会場に到着し、さらに試験開始が1時間半ほど遅くなって、そのテープを繰り返し聴きながら単語帳など見返した。それ以来、僕の中でユーミンといえば雪のイメージだ。大学に入り、「PEARL PIERCE」の前のアルバムに収録されているこの曲が「私をスキーに連れてって」の劇中歌となり、広瀬香美が登場するまでの数年間、ゲレンデで歌が流れるシンガーはユーミンという時代があった。彼女も苗場でのコンサートを定着させ、ユーミンを雪と結びつけて感じている人も多いのではないだろうか。だがユーミンの真骨頂はリゾートなどとはかけ離れた繊細な心模様の描写にこそあって、この曲で「今年も最初に会う人があなたであるように」なんて詩に、シンプルながら、いやシンプルだからこその芳しい力を感じる。それにしてもテレビに出ないアーチストの代表格でもあったユーミンの若い頃の動画はほとんど残っていない。後年のライブ映像もいくつかあったが、この映像の方が当時の何かを思い出すにはいいように思う。それにしても、みんな若い。そして、ダサい。いま見ると笑ってしまうが、それが時代というものなのだろう。なのに曲はまったくダサくない。これが才能というものなのだろう。
(2016.1.2) (レビュアー:大島栄二)
 


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