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路地
『夏のよる』

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 バンドをやってれば、ガラガラの客席よりは満員の客の前で演奏をしたいだろうし、音源が売れないよりは売れた方が良いに違いない。それは経済的な利潤という問題ももちろんあるけれど、それよりは、その演奏に足を運ぶ価値があるぞという、音源に金を払う価値があるぞという、音楽への評価そのものとして価値があるに違いないのだ。だからやたらと発信しようと躍起になって情報の渦に自ら身を投じることになってしまう。だが、渦の中で揉まれるようになった時にそこから逃れることも大切で、その時に必要となるのは唯一、音楽としての良さそのものでしかない。この路地という名前のバンドはHPをのぞいてみてもたいした情報は載せられてなく、無料で音楽が聴けますよということだけがシンプルに伝わってくる。この動画も公開から1/3年が経過してまだ300回にも届かないでいる。音楽への評価を得るには音楽をまず耳にしてもらうことが前提なのだが、その前提がなければやはり評価を得ることもかなわず。つまり前述の例でいうならば渦に飛び込んでさえいない状態ということがいえるだろう。でも、良いのだ、音楽が。寒くなってしまった12月も暮れに夏のよるを想像するのは困難だけれども、甘い日焼け止めの匂いと虫も眠っただろう吐息のような空気の中で、日中には吸い込むのも苦行だった空気を夜にようやく体内に取り込む時の生暖かさ。あの時期だけの暗闇にある独特の時間の流れ。そんなものを感じさせてくれて、思い出させてくれて、ああ、あと半年も寒さを我慢しさえすればあんな季節がまた巡ってくるんだろうなあという期待を抱かせてくれる。声は小さくとも、優秀なバンドだと思う。こういう音に、また耳を傾けていける2016年になるようにと、ささやかに想う。
(2015.12.24) (レビュアー:大島栄二)
 


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