佐野元春『君が気高い孤独なら』
私の思い出『荒野のネッカチーフ』
台風クラブ
『処暑』
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のんきである。この人たちはどうしてこんなにのんきな音楽が奏でられるのだろう。それは初期衝動のままの音楽を奏でているからに他ならないのだろうが、じゃあその初期衝動を心に持つ時のその初期に於ける若者の状況というものが、現代と30年前ではずいぶんと様変わりしてしまっていて、どうも窮屈な暮らしをしてしまって、させてしまっているのではないだろうかということを、こんなのんきな音楽を聴いているとふと思う。放課後に校庭に行けば誰かしらそこに友達がいて陽が暮れるまで訳のわからない遊びにふけっていた30年前が美しかったなどというつもりも驕りもなく、下校後の校庭に遊び場がないという事情にも意味や背景はあって、今さらそれを否定しても仕方ないのだが、事情に事情を重ねていった結果の今が、本当に正しいのかといわれると、僕は台風クラブというのんきサウンドなバンドが「この頃じゃみんなよそよそしい/まるでどこか他人事みたいだ」と歌うのが、信頼に足り得る答えなのではないのかなとちょっと思う。音楽を作る時に戦略を考えてマスターゲットにどう響くのかその言葉とメロディはと考えるのは経済原理としては実に正しくて、でもその正しい方法論が楽しいのかというと、それは誰にとっての楽しさなのかと首を傾げたくなる。では楽しさを純粋に追求したところで、その楽しさは誰に届くのかを考えてみると、結局堂々巡りの薮の中。少なくとも、こんなのんきな曲に出会えた偶然に感謝し、今日1日、いやこの4分間くらいはのんきな気分に浸ってもばちは当たるまいと、まあそんなところだ。
(2015.7.20)
(レビュアー:大島栄二)
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